2017 Fiscal Year Research-status Report
化学療法による腫瘍微小環境変化を標的とした卵巣癌治療開発の基礎的検討
Project/Area Number |
17K11286
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
添田 周 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00381377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, 部長 (50347225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パクリタキセル耐性 / 卵巣癌 / 癌幹細胞 / TAM誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
〇共培養実験系を用いたパクリタキセル・カルボプラチン暴露後のヒト卵巣癌細胞株の再増殖細胞を用いた癌幹細胞マーカー発現におけるTAMの機能解析 本研究において、ヒト卵巣癌細胞株を用いたパクリタキセル耐性実験モデルが必要であり、様々な条件でパクリタキセルに暴露することで効果的に耐性細胞が得られる実験モデルを作成した。 パクリタキセル耐性細胞の作製は過去の報告では長期間の培養が必要であることから、効率の良い実験系が得られた。しかし、新規の実験系であることからこの耐性細胞の増殖・接着・浸潤などの機能解析と耐性獲得の機序についての検討を行った。フローサイトメトリーを用いた検討では幹細胞マーカーの有意な上昇を認め、今回の耐性獲得の一つに癌幹細胞的な形質の獲得が関与していることを明らかにした。また、接着も更新しておりこれも耐性獲得に関与していることが示唆された。その一方で、これらの細胞を培養継代することによって、徐々にパクリタキセルに対する耐性が弱まることが判明し、継代する前に獲得した幹細胞様の性格が何らかの機序で継代により減弱することが判明した。また、この耐性細胞を用いたマイクロアレイによりTAM集簇にかかわる複数の遺伝子発現が亢進していることが判明した。この結果から、耐性を獲得した場合には腫瘍内微小環境で耐性の維持に寄与する可能性があるTAMの集簇に有利な環境に腫瘍細胞自体が変化している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
パクリタキセル耐性細胞の機能解析などに時間がかかったことにより、計画していたTAMとの共培養実験系に到達できなかった。これは、今回の実験を遂行する際に使用する細胞株のパクリタキセル耐性獲得の機序あるいは獲得後の親株からの変化についての検討に時間がかかったことが最も大きな理由と考える。今まで報告されてきた耐性細胞株の作成とは異なるモデルを作成したこともあり、この耐性機序については様々な機能解析を加える必要がありより多くの想定しなかった実験を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
再現可能なパクリタキセル耐性実験モデルが作成できたことから、速やかにTAMとの共培養実験に移行していきたい。また、今回のパクリタキセル耐性細胞の性格から、腫瘍内微小環境の変化にかかわる遺伝子発現に興味深い変化を認めたことからさらにその遺伝子に絞った実験を加えていく。このことに関連して平成29年度に予定していたもう一つの実施計画として、パクリタキセル暴露直後のサイトカインケモカイン発現についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度に行う予定であった腫瘍細胞とTAMの共培養実験のための金額が次年度に持ち越されたことによって生じた。本年度は、すでに確立された卵巣癌細胞株のin vitroの実験系を用いたTAMの共培養による実験系への移行はスムーズに進むと考えており、繰り越したものを有効に使用していく予定である。また、本年度は手術検体や実験動物を用いた免疫染色による検討も予定しており、これらの実験については免疫多重染色や実験動物などにも費用を要する。昨年度から繰り越した費用と本年度の助成金をこれらの実験に使用していく方針である。
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