2018 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞癌の血液凝固異常・抗がん剤耐性に着目したトランスレーショナルリサーチ
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17K11289
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
宮城 悦子 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40275053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (00254194)
荒川 憲昭 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 主任研究官 (60398394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣明細胞癌 / TFPI2 / 血液凝固 / 血栓症 / 前向き観察研究 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.医師主導の前向き観察研究について 卵巣明細胞癌の病状と血清Tissue Factor Pathway Inhibitor 2 (以下TFPI2)値の相関を明らかにすることを目的とした医師主導前向き観察研究を2018年6月11日付で倫理委員会承認を受け開始した。主要評価項目は、術前および術後経過観察時における血清TFPI値およびCA125の変化、副次評価項目は術後化学療法中~経過観察時の病状に伴う血清TFPI2値の変化の検討、術後経過観察時のCA125と血清TFPI値の補完性の検討とした。2018年6月より登録を開始し横浜市立大学附属病院の対象症例23例全例から同意を得て、前向き観察研究の検体採取を開始した。うち1例は、病状進行のため転院となり中止となり、現在22例を対象に研究を行っている。現在4/22例が再発担癌治療中で、16/22症例は複数回の検体採取を施行している。 2.トランスレーショナルリサーチについて 外科切除卵巣明癌組織122例のホルマリン固定パラフィン包埋組織検体を用いて、免疫染色によるTFPI2タンパク質の発現解析を行った。TFPI2の発現は、明細胞癌特異的に細胞質、一部の症例では核に認められ、他の組織型と鑑別する上で、優れたマーカーとなる可能性が示唆された。また、TFPI2を高発現する卵巣明細胞癌株JHOC-9のマウス異種移植モデルでも、免疫染色でTFPI2の発現が確認された。in vitroの明細胞腺癌細胞二次元培養系でTFPI2の局在を生化学的な分画とウエスタンブロットで調べたところ、多くの細胞株では細胞外基質にのみTFPI2の存在を認めた。臨床検体の免疫染色結果との相違は、細胞外に分泌されたTFPI2が細胞外基質に沈着する前に血液中に移行することが原因と考え、更に解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣明細胞癌の病状と血清TFPI2値の相関を明らかにする医師主導前向き観察研究では、順調に研究参加症例をリクルートしている。また、研究参加者には、緩解状態にある患者と再発治療中の患者の両者が含まれており、TFPI2の卵巣明細胞腫瘍血清腫瘍マーカーとしてのパーフォーマンスが今後明らかになっていくと考えられる。 さらにトランスレーショナルリサーチにおいては、目標としていたTFPI2の免疫染色、明細胞癌株のマウス異種移植モデル、in vitroの明細胞腺癌細胞二次元培養系を確立することができた。今後、TFPI2分子が卵巣明細胞癌の悪性進展にどのように寄与しているかを解明できる実験系が着実に構築されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
医師主導の前向き観察研究については、2020年3月31日までを観察期間とし、検体採取を行う予定であるが、血清TFPI2値測定は登録開始より1年後(2019年7月)と、観察期間終了後(2020年4月)に施行するし解析を行う予定である。さらに、現在臨床性能試験として行っている、初回手術前に卵巣明細胞癌を特異的に検出する血清腫瘍マーカーとしてTFPI2の臨床実用化の研究により、TFPI2の実用化に成功した場合には、さらに大規模な画像診断との組み合わせによるアルゴリズムを作成する臨床研究に発展させていきたいと考えている。 また、基礎的研究の中では、TFPI2のplasmin阻害作用による線溶系抑制が、卵巣明細胞腺癌患者の血栓症発に関与することを想定し、ノックアウト細胞と野生株細胞をマウス皮下に移植し、静脈の血栓形成に与える影響を評価する実験の準備を進めている。ES2細胞のマウス皮下移植モデルで、野生株を移植すると血中TFPI2が高値となり、ノックアウト細胞株では、移植をしていないマウスと同等で、ほぼTFPI2を認めないことを確認できているため、今後のさらなる研究発展が期待できるものと考えている。
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Causes of Carryover |
H30年度に配分された研究費は、現在、独自に作製した抗TFPI2-マウス単クローン抗体で進めている解析と比較するために、市販の抗TFPI2抗体を購入する計画であったが、独自抗体の解析を優先して行い、比較解析を次年度に実施する計画に変更したので、研究費を繰り越した。
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