2020 Fiscal Year Research-status Report
バソヒビンファミリーによる血管新生と免疫逃避を標的とした新たな卵巣がん治療の開発
Project/Area Number |
17K11294
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
嵯峨 泰 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70360071)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バソヒビン2 / 微小管 / パクリタキセル / 卵巣がん / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
バソヒビン2は様々な腫瘍が産生する血管新生因子であり、RNA干渉や中和抗体によるバソヒビン2の阻害によって腫瘍の進展を抑制できることを、これまで報告してきた。また他施設の近年の報告を踏まえて、バソヒビン2と微小管との関係、ひいては微小管を標的とする抗がん剤との相互作用を検討した。その成果としてバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞は微小管に作用点をもつパクリタキセルに対する感受性が増強すること、またその機序としてバソヒビン2ノックアウトによる細胞周期のM期中期への集積を、世界に先駆けて発見し報告した。本年度は微小管に作用点を持つ他の抗がん剤や、臨床的に卵巣がん治療に用いられる種々の抗がん剤に対する感受性の変化を検討した。その結果、バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞は様々な抗がん剤に対する感受性の変化が認められた。最近、バソヒビンファミリーはリガンドが結合した細胞膜受容体の細胞内輸送に関与することが報告されており、今回の知見との関連が注目される。われわれが研究を続けてきたバソヒビン2を標的とした卵巣がん治療戦略は、血管新生抑制のみならず、従来の標準化学療法との併用によりその効果を増強できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バソヒビン2は主に腫瘍が産生する血管新生促進因子であり正常組織ではほとんど発現がみられない。このことからバソヒビン2を標的とした治療戦略は従来の抗血管新生療法に比べて副障害の少ない、比較的安全な治療となり得る。われわれはこの仮説を実証するために研究を遂行し、基礎実験により検証を進めてきた。さらに本研究課題の期間中に、バソヒビン2は微小管の活性を促進する酵素作用をもつことが複数の研究機関から相次いで報告された。微小管は卵巣がん標準化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルの標的因子であることから、われわれが開発した抗バソヒビン2抗体療法を併用した場合の抗がん剤感受性への悪影響が危惧された。この検証をすすめたところ、バソヒビン2のノックアウトはむしろパクリタキセルの感受性を増強させることが明らかとなった。さらにその機序として、バソヒビン2ノックアウトによる細胞周期のM期後期への移行阻害と、その結果パクリタキセル高感受性のM期中期への集積が示された。このことからバソヒビン2を標的とした卵巣がん治療戦略の有用性がさらに高まった。また最近、バソヒビンはリガンド結合後の細胞膜受容体の細胞内輸送に関与することが報告された。バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞はパクリタキセル以外の複数の抗がん剤の感受性も増強することを観察しており、その機序の解明に向けて研究を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立した複数のバソヒビン2ノックアウト細胞を対象にトランスクリプトーム解析を行い、バソヒビン2ノックアウトに伴う種々の抗がん剤の感受性増強機構を明らかにするとともに、バソヒビン2に関わる新たな因子の発見を試み、さらなる治療戦略の開発につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は培養細胞を用いたin vitroレベルの実験が主であり、高価な実験動物を多数用いたin vivo実験を含まなかったため。来年度は動物実験を予定している。
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