2021 Fiscal Year Research-status Report
バソヒビンファミリーによる血管新生と免疫逃避を標的とした新たな卵巣がん治療の開発
Project/Area Number |
17K11294
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
嵯峨 泰 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70360071)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バソヒビン1 / バソヒビン2 / 卵巣がん / 抗がん剤 / 微小管 / パクリタキセル / ビンクリスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞株を複数樹立し、臨床的に卵巣がん治療に用いられている種々の抗がん剤に対する感受性の変化を観察した。これまで上皮性卵巣がんに対する多剤併用化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルに対する感受性が増強することを見出し、バソヒビンの微小管活性促進作用と合わせて考察し報告した。今回はパクリタキセルとは逆に微小管活性を阻害する抗がん剤で、非上皮性の卵巣がん治療に用いられるビンクリスチンに対する感受性の変化を観察した。その結果、複数のバソヒビンノックアウト卵巣がん細胞株においてビンクリスチンの感受性の低下が観察された。このことから、バソヒビン2を標的とした治療戦略とビンクリスチンを含む化学療法レジメの併用には注意を要する可能性が示唆された。しかしながら、現在ビンクリスチンは卵巣悪性腫瘍のなかで多くを占める上皮性卵巣がん治療に用いられることはまれであり、また非上皮性卵巣がんにおいてもビンクリスチンを含まない化学療法レジメが推奨されていることから、この知見の本研究を遂行する上での影響は軽微と考えられる。他の抗がん剤に対する感受性の変化も検討し様々な変化を観察した。しかしながら細胞株による傾向の違いもみられるため、再現性を確認する必要があり繰り返し実験中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バソヒビン2は主に腫瘍が産生する血管新生促進因子であり、正常組織ではほとんど発現がみられない。このことからバソヒビン2を標的とした治療戦略は従来の抗血管新生療法に比べて副障害の少ない、比較的安全な治療となり得る。われわれはこの仮説を実証するために研究を遂行し、基礎実験により検証を進めてきた。さらに本研究課題の期間中に、バソヒビン2は微小管の活性を促進する酵素作用をもつことが複数の研究機関から相次いで報告された。微小管は卵巣がん標準化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルの標的因子であることから、われわれが開発した抗バソヒビン2抗体療法を併用した場合の抗がん剤感受性への悪影響が危惧された。この検証をすすめたところ、バソヒビン2のノックアウトはむしろパクリタキセルの感受性を増強させることが明らかとなった。さらにその機序として、バソヒビン2ノックアウトによる細胞周期のM期後期への移行阻害と、その結果パクリタキセルに高感受性を示すM期中期への集積が観察された。このことからバソヒビン2を標的とした卵巣がん治療戦略はパクリタキセルを含む標準化学療法との併用が有用である可能性が示唆された。一方、微小管に対してパクリタキセルと逆の作用を示す抗がん剤であるビンクリスチンに対しては、バソヒビン2ノックアウトは感受性を低下させることが観察された。バソヒビン2を標的とした卵巣がん治療戦略とビンクリスチンとの併用は注意を要するものの、本抗がん剤は卵巣がん治療に用いられることはほとんどないため、大きな問題とはならないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞株を対象に、臨床的に卵巣がん治療に用いられている種々の抗がん剤または分子標的治療薬に対する感受性の変化を観察する。この結果により、将来的に本研究の主題であるバソヒビン2を標的とした卵巣がん治療戦略と、それとの併用が適した、あるいは避けるべき療法レジメが明らかとなることが期待される。
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Causes of Carryover |
コロナパンデミックにより学会中止あるいはウェブ開催が相次ぎ、旅費の執行が必要なかったため。来年度は状況により学会参加を予定している。
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