2020 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌の診断・治療における指標としてのHPV型の確立と型別病態メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K11297
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
松本 光司 昭和大学, 医学部, 教授 (30302714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柊元 巌 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / HPV / 子宮頸癌 / 子宮頸部上皮内腫瘍 / CIN |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌 (ICC) やその前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍 (CIN) ・上皮内腺癌 (AIS) は発癌性ヒトパピローマウイルス (HPV) の持続感染によって生じる。子宮頸癌から最も検出頻度の高いHPV16型ではわずかなゲノム配列の違い (<10%) によってバリアント (lineage/sublineage) に分類され,発癌性や組織型との関連が報告されている。HPV18型はHPV16型に次いで検出頻度が高いが、バリアントに関する報告は海外においてもほとんどない。日本におけるHPV18型バリアントと臨床病理像との関連を調べることを本研究の目的とした。次世代シーケンサーを用いて子宮頸部検体87例 (正常 [NL] n=9、CIN n=7、 AIS n=12、 ICC n=59) から検出されたHPV18型のゲノム配列を解読し、系統樹解析によってバリアント帰属を決定した。85例がlineage A (sublineage: A1 n=72、A3/A4 n=13)、2例がlineage Bであった。残念ながら、sublineage A1の割合はICCとNL/CINの間でも (75% vs. 85%, P=0.46)、扁平上皮癌と腺癌の間でも (82% vs. 90%, P=0.45) 差が認められなかった。日本でのHPV18型のバリアント分布はsublineage A1に極端に偏っており、発癌性・組織型との関連は認められなかった。病変が進展するほどE2領域が欠損している症例が増えることから、E2領域の組込み発癌と関連している可能性がある。なお、この成果は、英文論文として報告した (Yamaguchi-Naka M, Matsumoto K, et al. Infect Genet Evol 2020; 83: 104345.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
HPVタイピングや次世代シーケンサーを用いたHPVゲノムの配列解析はすでに確立しており、順調に成果を報告しているが、HPVゲノム組込み部位解析は難航している。次世代シーケンサーを用いて、組み込まれたHPVゲノム側から組込み部位の塩基配列を同定する方法で解析を試みているが、その解析系を確立できていない。ウイルスゲノム側から隣接するヒトゲノムをシーケンスするやり方には限界があるのかもしれない。現在、子宮頸癌患者のヒトゲノムのmRNA解析を行い、再発群と非再発群の両群間で発現に差が認められる遺伝子群を同定することで、再発リスクの高い組込み部位を同定することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーを用いてヒトゲノムをシーケンスする方法でHPV組込み部位を同定する作戦に切り替える。現在、子宮頸癌患者のヒトゲノムのmRNA解析を行い、再発群と非再発群の両群間で発現に差が認められる遺伝子群を同定することで、再発リスクの高い組込み部位を同定することを検討している。また、最終年度となるため、これまでに蓄積してきたデータを英文論文として報告する。HPVタイプ別の子宮頸癌予後データは集まっており、英文論文として報告する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応等で、研究の進捗が遅れた。そのため、次年度へ繰り越すこととなった。
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Research Products
(7 results)