2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the signals induced by the variant isoforms of TrkB expressed on ovarian clear cell adenocarcinoma
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17K11298
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
後藤 優美子 東海大学, 医学部, 助教 (50624574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀谷 美恵 東海大学, 医学部, 准教授 (50338787)
石本 人士 東海大学, 医学部, 教授 (10212937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 卵巣明細胞腺癌 / 神経栄養因子受容体TrkB / アイソフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌組織サンプルより総RNAの抽出を行なった。また、TrkBアイソフォーム発現パターンについて解析が可能となるようにプライマーを設計し、これらのサンプルで発現するTrkBmRNAのアイソフォームを確認した。さらに、トランスフェクションに適した細胞株の選出を行うことを目的として、各種卵巣明細胞腺癌細胞株が発現するTrkBmRNAアイソフォームを確認するとともに、TrkB阻害剤感受性レベルも確認した。 (1)神経栄養因子受容体TrkBの3つのアイソフォームの識別可能なプライマーを設計し、リアルタイムPCRを行なった。検体は、卵巣明細胞腺癌について約15例、漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌については小数例を用いた。さらに、卵巣明細胞腺癌の12細胞株を用いた。その結果、すべての検討例にTrkBアイソフォームの発現を認めた。TrkBアイソフォームの発現構成は明細胞腺癌の中でも多様であり、ライブラリーから遺伝子を抽出する候補を得ることができた。(2)免疫組織化学においてTrkBタンパクの発現を20数例の卵巣明細胞腺癌の手術検体を用いて確認した。(3)TrkBの発現を確認した上記卵巣明細胞腺癌のうち5細胞株を用いて、抗がん剤シスプラチン添加実験、TrkB阻害剤K252a添加実験を行なった。これらの細胞株が抗がん剤感受性と、TrkB阻害剤感受性を確認した。(4)また、これらの細胞株を用いて、BDNF存在下・非存在下でのTrkB下流シグナル分子のリン酸化をWestern blottingにより解析する系の確率に着手した。(5)卵巣明細胞腺癌細胞株に、細胞内にチロシンキナーゼ(TK)を持つ完全長型アイソフォームTrkB-TK、細胞内にTKを持たないdominant negativeアイソフォームのTrkB-Shc,TrkB-T1のベクターを組み込み、実験系を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)明細胞腺癌以外の組織型、すなわち漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌について今までRT-PCRを用いて検出していたアイソフォームをリアルタイムでの定量にシフトしたため、リアルタイムPCRの条件設定の際に、プライマーの再設計に時間を要した。そのため、現時点で初年度の予定である各10検体のリアルタイムPCR解析が未了となった。これについては、卵巣癌組織検体を用いたリアルタイムPCRにおいて、3つのTrkBアイソフォームを認識するように、細胞外の3つに共通するドメイン、リガンドのBDNF結合領域、TrkB-T1のみが持つドメイン、TrkB-shcのみが持つshc結合ドメイン、TrkB-TKのみが持つTKドメインを認識するようにプライマーを設計した。組織サンプルは既に収集済みであるため、残りの明細胞腺癌以外のリアルタイムPCRは直ちに実施可能である。 (2)上記のように、プライマーの再設計によりリアルタイムPCRの解析に時間を要したため、初年度に行う予定であった、TrkBアイソフォームのRNAレベルでの変異を認めた検体について次世代シークエンスに着手できていない。これについては、用いる予定の明細胞腺癌検体の方向はすでに絞り込まれており、今年度に直ちに実施可能である。 (3)先行研究で使用していたTrkBの細胞外ドメイン、細胞内のTKを認識する2種類の抗TrkB抗体が市販されなくなり入手できなくなっていたため、新たな抗体の選定、有効性の確認に時間を要し、初年度の予定であった免疫組織化学がまだ終了していない。これについれは、新たな2つの抗TrkB抗体の有効性を確認できたため、すでに収集済みの卵巣癌サンプルを用いて今年度に免疫組織化学を実施可能な状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
TrkB分子は、多くのスプライシングバリアントを持つ可能性があるため、当初の予定より再現性を得にくく、組織片よりアイソフォームを同定することが困難であることが明らかとなった。しかし、2年間の研究推進により、アイソフォーム同定のための手段は確立できたと考える。以下に、今後の研究推進の方法を示した。 (1)リアルタイムPCR、免疫組織化学については実験条件はすでに確立しており、組織検体も収集済みであるため、今年度前半に行うことが可能である。 (2)すでに、卵巣明細胞腺癌の細胞株におけるTrkBアイソフォームの発現とTrkB阻害剤感受性については明らかであるため、これらを用いて今年度前半にBDNFシグナルによるAKT、MAPKを含むシグナル分子の活性化、およびSnai,ZebなどのEMT関連分子の活性化をWestern blottingにより解析し、TrkBアイソフォーム・細胞の性状とシグナル分子の関与に差があるかどうかを明らかにする。これらに差があることが明らかになれば、各細胞株が発現するアイソフォームのトランスフェクタントを作製し、同様の実験を行う。今年度後半には、これらの細胞とトランスウェルを用いてEMTに関連するTrkB機能解析も行なう。 (3)リアルタイムPCR、免疫組織化学について、TrkBアイソフォームの発現構成と組織型、臨床進行期、転移の有無、抗がん剤耐性等との関連をデータ解析する。 (4)リアルタイムPCRの結果、RNAレベルで変異が明らかになった検体について、cDNA遺伝子配列を次世代シークエンサーにより明らかにし、mRNA発現プロファイルを比較して、他の腫瘍関連遺伝子発現に関する影響を解析する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が平成30年度前半は9月まで海外研究所に留学していたため、研究分担者と連携しながら研究を継続していたが既存の物品や試薬を使用し、新たに購入する必要はなかったため繰越金が発生した。前述の研究推進計画に沿って、リアルタイムPCR、免疫組織化学、細胞実験、トランスフェクション、ウェスタンブロッティングに必要な物品・試薬・抗体等の購入、また人件費、学会参加費等を中心に平成31年度請求分+繰越金を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)