2017 Fiscal Year Research-status Report
Hormone therapy to reduce the risk of cardiovascular disease in women with endometriosis
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17K11302
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
若槻 明彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90191717)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 心血管疾患 / エストロゲン / テストステロン / 血管内皮機能 / LDLコレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症女性は、血管内皮機能が低下し、国内外からの疫学研究で心血管疾患リスクになることが報告されている。子宮内膜症女性へは月経痛改善のためにホルモン療法を行うが、テストステロンを含有する黄体ホルモンはエストロゲンの脂質や血管内皮機能への好影響を相殺することがわかっている。また、テストステロンは冠動脈を攣縮させるとの報告や、テストステロン比率の高い閉経後女性では心血管疾患リスクが高いなどの報告がある。 平成29年度の計画は、女性における性ホルモン(エストロゲン、テストステロン)の変化が心血管疾患リスクマーカーにどのように影響するかを検討することである。子宮内膜症女性を対象として、Gn-RHaを6ヶ月間投与し、人工的に低エストロゲン環境となった女性における血中エストラディオール(E2)、FSHとテストステロン活性を表す遊離テストステロンや、脂質、血管内皮機能(FMD)なども測定した。Gn-RHa投与後、E2とFSHは著明に低下したが、遊離テストステロンは1.09±0.23 to 1.29±0.33 ng/mLと有意に上昇した。総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールは変化なかったが、LDLコレステロールは101.5±19.8 to 120.9±24.5 mg/dLと有意に上昇し、FMDは10.2±3.3 to 7.3±3.6 %と有意に低下した。Gn-RHa投与前後の遊離テストステロンの変化量はFMDの変化量と有意の負の相関を認めたが、LDLコレステロールの変化量との間には関連性はなかった。今回の検討で、低エストロゲン環境になるとテストステロン活性が上昇することが初めて明らかになった。これまでの報告では、血管内皮機能の低下はエストロゲン低下によるといわれているが、テストステロン活性の上昇も関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜症は、月経痛、慢性腹痛など特徴的な症状があり、妊症も高率に合併することからQOLを低下させる代表的な疾患で、性成熟女性の約10%存在するといわれている。一方、子宮内膜症は心血管疾患のリスクであることが我々の報告や国内外の研究から明らかにされている。子宮内膜症女性には月経痛改善の目的でGnRHaや経口避妊薬(OC)・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、黄体ホルモン療法を用いることが多い。これまでの我々の検討で黄体ホルモンに含有するテストステロン作用がエストロゲンの血管内皮機能改善効果やHDLコレステロール上昇効果を相殺することがわかっている。本研究の目的は、女性におけるエストロゲンおよびテストステロン活性と心血管疾患リスクとの関連性を検討するとともに、子宮内膜症女性の心血管疾患リスクを低減できるホルモン療法を確立することである。研究は以下の3年計画である。平成29年度の研究目的は、エストロゲンやテストステロンの変化が心血管疾患リスクマーカーにどのような影響を与えるかを検討する。平成30年度はOC・LEPを使用する際、黄体ホルモンにテストステロン作用を有する、あるいは有さない種類を用いて、心血管疾患リスクマーカーへの影響を検討する。平成31年度は黄体ホルモン療法の際、テストステロン作用を有する、あるいは有さない種類を用いて、心血管疾患リスクマーカーへの影響を検討する。平成29年度の研究成果として、GnRHaによる低エストロゲン環境でテストステロン活性が上昇することが初めて明らかになった。さらにそのテストステロン活性の上昇はエストロゲン低下とともに血管内皮機能の抑制に関与することが示され、女性におけるテストステロンが心血管疾患リスクに悪影響であることが示された。このように平成29年度は予定通りの計画を遂行して新しい知見を得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究で、女性における内因性のテストステロン上昇は血管内皮機能に悪影響であることが示された。またこれまでの研究ではホルモン療法の際に心筋梗塞や脳卒中はエストロゲン量と用量依存的に上昇することがわかっている。今後の研究は子宮内膜症女性にホルモン療法を使用する際、エストロゲン量や黄体ホルモンに含有するテストステロン作用が心血管疾患リスクマーカーにどのように影響するかを検討し、適切なホルモン療法を確立することである。 平成30年度はOC・LEPにおいて、エチニィルエストラディオール(EE)+プロゲスチン(テストステロン作用を有する)とEE+プロゲスチン(テストステロン作用を有さない)を投与し、各々のOC・LEPの投与前後で遊離テストステロンおよび総テストステロンとsex hormone binding globulin (SHBG)から理論的なテストステロン強度としてのfree androgen indexを算出する。一般的にエストロゲンは血管内皮機能を改善し、HDLコレステロールを上昇させることが知られているが、テストステロン有・無のOC・LEPが血管内皮機能、脂質代謝に与える影響およびテストステロン強度との関連性を検討する。また、EEが超低用量の20μgから中用量の50μgのOC・LEP投与後の血管内皮機能、脂質代謝に与える影響を検討し、EE量との関連性を検討する。平成31年度は黄体ホルモン単独療法を行う予定である。OC・LEPの場合と同様にテストステロン作用を有するプロゲスチンと有さないプロゲスチンの投与前後で遊離テストステロンやfree androgen indexを算出し、テストステロン強度を理論的に数字化させ、血管内皮機能、脂質代謝との関連性を検討する。 本研究成果は、子宮内膜症女性における内因性および外因性テストステロンの心血管疾患リスクへの影響を明らかにすることになり、心血管疾患発症予防のためのホルモン療法の確立につながると考えられる。
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Causes of Carryover |
予定通りに研究費を執行したが、予算額と支出額の間に差が生じた。次年度はその残高と合わせて、研究計画通りの測定項目に使用する。
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