2018 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌時系列検体を用いた黄体ホルモン治療抵抗性・再発を規定する遺伝子変異の同定
Project/Area Number |
17K11308
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
杉山 裕子 公益財団法人がん研究会, 有明病院 細胞診断部, 部長 (80322634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
高澤 豊 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 部長 (50313151)
野村 秀高 公益財団法人がん研究会, 有明病院 婦人科, 副医長 (60408549)
加藤 一喜 公益財団法人がん研究会, 有明病院 婦人科, 医長 (80399451)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 婦人科腫瘍 / 子宮体癌 / 黄体ホルモン療法 / 治療感受性 / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、黄体ホルモン療法が施行された子宮体癌において、治療前及び治療後感受性または抵抗性となった症例で、経時的なマルチサンプリングによるゲノム・エピゲノム情報のマルチオミックス解析(エクソーム/メチローム/トランスクリプトーム解析)を行い、黄体ホルモン療法下にある子宮体癌の、時間的多様性・空間的多様性(腫瘍内不均一性)を調べ、黄体ホルモン療法における治療感受性・抵抗性および再発を規定する因子を同定し、妊孕性温存療法に貢献することである。 このため平成30年度は、平成29年に引き続き、1. 検体・臨床情報収集、2. 検体調製(DNA/RNA抽出)及び 3. マルチオミックス解析を計画し、実施した。その結果を以下に示す。 1. 検体・臨床情報収集: 説明・同意のもとに69例319検体(腫瘍部207検体、正常部112検体)を収集した。臨床情報から黄体ホルモン療法における治療感受性を、Complete Response (CR), Partial Response (PR), Stable Disease (SD), Progressive Disease (PD)の4群にわけた。その結果69例中、CR20例, PR6例, SD8例, PD35例を認めた。 2. 検体調製 (DNA/RNA抽出): 1. の69例319検体中、15症例61検体のDNA/RNA抽出が終了した。 3. マルチオミックス解析: 2.の15症例中6症例17検体のエクソーム、メチローム、トランスクリプトーム解析が終了した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度研究実施計画として、1. 検体・臨床情報収集、2. 検体調製(DNA/RNA抽出)及び 3. マルチオミックス解析を計画した。以下に各項目に関しての現在までの達成度について記載する。 1. 検体・臨床情報収集計画: 平成29年度に引き続き、検体・臨床情報収集し、目標症例の35例(90検体)。達成度:説明・同意のもとに黄体ホルモン療法が施行された69例319検体(腫瘍部207検体、正常部112検体)を収集した。全症例で臨床情報収集が終了した。評価:(1)当初の計画以上に進展している 2. 検体調製:マルチオミックス解析用にDNA/RNAを抽出する。黄体ホルモン療法施行目標症例の35例(90検体)のDNA/RNAの抽出を予定し、15症例61検体のDNA/RNA抽出が終了した。(評価:(2)おおむね予定通り) 3. マルチオミックス解析(エクソーム/メチローム/トランスクリプトーム解析) 目標症例の35例(90検体)を予定し6症例17検体のエクソーム、メチローム、トランスクリプトーム解析を行い、SNV(一塩基変異)、Indel(挿入欠失)、CNV(コピー数異常)、SV(構造変異)、メチル化、mRNA情報が得られた。(評価:(3)やや遅れている。)
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年(令和元年)度計画は当初の研究計画通り以下のように行う。 1. 平成30年度までに、目標症例の35例(90検体)を上回る69例319検体(腫瘍部207検体、正常部112検体)の検体・臨床情報の収集が終了した。その中より、DNA/RNAの質が良い検体を抽出し、最終目標症例の35例(90検体)のDNA/RNAを抽出とマルチオミックス解析を進める。 2. マルチオミックス解析の結果に基づき、以下の情報解析・統合的解析を行う。 a.がん細胞が、プロゲステロンの選択圧下に抵抗性を獲得し、クローンを拡大する機序を解明する目的で、クローン進化の動的モデリングとシミュレーションを行う。 b.動的ネットワーク解析ならびにクローン進化のモデリングとシミュレーション解析結果について、オミックス解析結果により実証する。 c.The Cancer Genome Atlas等、公開されている子宮体部類内膜腺がんの統合的ゲノム解析データベースを利用し、同定した遺伝子変異について実証する。 3. 統合解析:情報解析で得られた結果と臨床情報を統合的に解析し、治療感受性・抵抗性および再発を規定する因子を同定する。また、腫瘍の時間的多様性・空間的多様性をマルチオミックスデータで解析することにより、既存の方法では同定できなかったプロゲステロン・エストロゲンのシグナル経路と、子宮体部悪性腫瘍において重要なシグナル経路の動的ネットワーク解析を行う。
|