2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K11318
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
森田 由香 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (60547602)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢性難聴 / 認知機能 / 遺伝子 / 疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性難聴はコミュニケーション障害をきたすのみならず、認知機能にも影響するといわれている。超高齢社会を向かえた我が国にとって、認知症対策は避けて通れない喫緊の課題である。認知症は一旦発症すると有効な治療法がなく、早期発見、早期介入による発症予防が重要である。我々は、加齢性疾患を対象とした佐渡市の疫学研究(PROST 研究)において、加齢性難聴と脳血管障害、糖尿病、腎障害など他の加齢性疾患との間にその発症や程度に有意な相関のあることを発表してきた。本研究では加齢性難聴と認知症の関係に注目し、PROST に登録されたビッグデータを用いて難聴の程度と認知機能、難聴への介入(補聴器)の認知機能への影響、加齢性難聴に関する遺伝子変異に関して検討している。 現在まで、3300例の登録があり、そのうち793例の純音聴力検査が利用可能であり、周波数別の聴力検査結果の入力を終了した。認知機能の指標であるMini mental state examination(MMSE)の結果について、23点以下が認知機能低下と判断して、難聴との相関を検討した。多変量解析では、認知機能低下はオッズ比2.546(95%CI 1.435-4.520、p<0.001)と強い相関をみとめた。周波数別の解析においても、70歳未満の群では250~8000 Hzの全周波数において、また70歳以上の群では500、2000、4000、8000 Hzにおいて認知機能低下群で有意な聴力閾値の上昇をみとめた。引き続き、加齢性難聴と認知機能の関係を裏付けるデータとして、頭部MRIの白質病変との相関、アルツハイマ-病の原因遺伝子のひとつとされるApoE4遺伝子との関連について、研究をすすめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
②の研究計画が遅れている。 ①佐渡PROST(離島でのヒトにおける疫学調査) その中で、純音聴力検査を施行した例は現在3300例以上あり、そのうち793例について、各周波数(125、250、500、1000、2000、4000、8000 Hz)の聴力閾値から加齢性難聴発症、非発症の分類を行った。この中で、MMSE(mini mental state examination)を用いて認知機能障害の程度を評価し、上記のように難聴との強い相関関係を認めた。今後は、この結果と、脳MRIより、脳白質、灰白質、側脳室の容積と難聴の程度の関係を解析する。またアルツハイマー病の原因遺伝子のひとつとされるApoE4遺伝子の関与についても解析する。 ② 加齢性難聴患者における補聴器装用による認知機能低下予防効果の検討 新潟大学医歯学総合病院耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診する65 歳以上の加齢性難聴患者を対象に前向き研究を行う予定であったが、別の疾患による高度難聴例が多く、加齢性難聴のみの患者は非常に少ない。そのため、この研究は進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
佐渡PROSTの聴力と認知機能の指標であるMMSEとの相関をみとめたので、脳MRI白質病変の解析を行う。頭部MRI 検査を施行した例から、白質病変の容積はコンピューターソフトMRIcro(http://www.mccauslandcenter.sc.edu/mricro/mricro/)を、脳白質や灰白質、側脳室の容積はSPM8(http://www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm/software/spm8/)を用いて解析する。そして、聴力検査と白質病変の大きさとの関係を統計学的手法にて解析する。認知障害で大脳白質が萎縮するように、加齢性難聴発症者では、白質病変の容積がより多いと予想していたが、現在100例程度の解析を行ったが、今のところ、明らかな相関関係はみとめていない。本研究が病院ベースの横断研究であるため、頭部MRI所見は健康な高齢者と比べて広範囲、高度な脳疾患が認められる例が多いことが影響している可能性が考えられた。 幸い、本県の別の市における健康高齢者を対象とした疫学調査が開始されるにあたり、参加が可能となった。本研究プロジェクトは前向き研究であり、横断的解析のみならず、縦断的解析も可能である。すでに、予備調査は終了して、本調査が開始されており、こちらのデータの解析を新たに開始する。 また同時進行予定であった補聴器による難聴改善が認知機能の低下を予防できるか検証するため、大学病院の難聴外来においてすすめる予定であったが、軽度難聴のみの患者は大学病院には集まらず、症例数が非常に少ない状態である。そのため、前述のスタディの一環として、地域病院において、補聴器装用と認知機能の関係について検証をすすめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
外来で貸し出し用の補聴器が不要であったため、予定より少なかった。 一方で、新たな疫学調査に参加するための費用が発生した。
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