2018 Fiscal Year Research-status Report
めまいの中枢神経機構解明を目指した前庭性高次脳機能応答に関する研究
Project/Area Number |
17K11320
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
將積 日出夫 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60187507)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 大匡 富山大学, 附属病院, 講師 (50345576)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 機能的赤外線分光法 / 脳波 / 前庭刺激 / めまい / 高次機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非侵襲的な脳機能検査ほうである機能的近赤外線分光法(NITS)と脳波(EEG)の両者を同時記録する携帯可能な検査機器を用いて、被検者において 各種生理的前庭刺激に対する高次脳機能応答を解析し、めまいの中枢神経機能の解明に発展する検査手技ならびに検査方法を確立することを目的としている。初 年度には、まず至適な前庭刺激法を確立することと携帯可能が記録システムによる実験系を整備することとした。島津製作所製の携帯型NIRSシステム(ライトニ ルス)を整備することでベットサイド、直立時、歩行時、回転刺激時の脳血流変化を観測することが可能となった。さらに、NIRS分析法では、fMRI解析に用いられている解析ソフトを用いて集団解析が可能となった。これらのシステムを用いた直立時の検討では、直立時に視角・体性感覚入力を人為的に減弱することで前 庭覚との感覚混乱を生じることが可能なEquitestの感覚統合テストを刺激系として両側側頭葉上面から頭頂葉、前頭葉、後頭葉の一部までを含む大脳皮質領域の 血流応答を計測した。健常被検者では前庭覚、空間認知、運動制御等に係わる大脳皮質領域が両大脳半球において賦活化することを明らかとした。さらに強い感 覚混乱が生ずる場合には、特に補足運動野と上頭頂小葉の賦活化が見られた。一方、慢性一側性前庭障害患者では弱い感覚混乱を生ずる場合でも補足運動野や上 頭頂小葉が賦活化している可能性が示唆された。脳波においては、脳内神経活動の脳機能イメージング解析にLORETA法を導入し、温度刺激に対する反応をNIRSと 比較している
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
携帯型NIRSシステムの整備により富山大学附属病院中央検査部平衡機能検査室内に設置された各種前庭刺激法を容易に活用することが出来るようになった。そこで本年度は、エアーカロリック刺激装置(第一医科製)を用いた前庭刺激時の脳機能イメージング解析をfNIRSとEEGの両者で行った。右利きの健常被検者に対して、対照刺激(37℃エアー 60秒間)および冷刺激(20℃エアー 60秒間)を組み合わせた温度刺激を2サイクル行った。fNIRSの解析では、刺激と同側の上側頭回および下頭頂葉は対側より脳活動が賦活化された。sLORETA解析によるEEG解析では、両側前庭皮質にてベータ波の賦活化が認められた。以上のように、fNIRSとEEGの同時記録により前庭刺激時の脳機能イメージングの解析を初めて行うことが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、本年度に確立できたfNITSとsLORETA解析を用いたEEGの検査により、健常成人にて、①回転刺激による生理的前庭刺激に対する高次脳応答野の検討、②温度刺激、音刺激などの非生理的前庭刺激に対する高次脳応答野の検討、③視運動性前庭刺激装置を用いた視運動性視角-前庭覚相互関与に係わる刺激に関する高次脳応答野の検討、④各種前庭刺激間の高次脳応答の比較を検討する予定である。 さらに、一側性前庭機能障害患者を被検者として、前庭代償に係わる高次脳応答野の検討を行う予定である。一側性前庭機能障害患者と健常成人との比較、前庭 機能障害の軽傷者と難治例の比較、若年患者と高齢患者の比較を行う。前庭代償に関する高次脳応答野について、経時的な評価を加えるとともに加齢、難治化に 関する要因についても検討を行う予定である。これらの研究ではNIRSとEEGの検査結果を比較して、2種類の高次機能検査を用いた臨床応用を目指した統合的解析法の確立を目指す予定である。
|