2017 Fiscal Year Research-status Report
空間認識が人工内耳装用者の平衡機能に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
17K11341
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
平海 晴一 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (10374167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 有美子 岩手医科大学, 医学部, その他 (20740765)
佐藤 宏昭 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40215827)
米本 清 岩手県立大学, 社会福祉学部, 教授 (90305277)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重心動揺計 / 人工内耳 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工内耳装用患者および健聴者各8名に対し,音刺激が体平衡に及ぼす影響を測定した。重心動揺計(GP-5000,Anima Co.,Ltd.,Tokyo,Japan)を用いて,無響室で測定を行った。各被験者の1m前方にスピーカーを配置し,70dBの音の大きさでホワイトノイズを被験者の耳の高さの位置から鳴らせるように設定した。測定環境は4つで,(1)音あり開眼,(2)音あり閉眼,(3)音なし開眼,(4)音なし閉眼,である。静止時の重心の位置とほぼ一致するcenter of foot pressure(COP)の動揺を測定し,その総軌跡長,外周面積,速度,前後動揺平均中心変位,左右動揺平均中心変位を算出し,それぞれ開眼-閉眼,音あり-音なし,人工内耳装用者-健聴者,の条件を3つの因子として分散分析(analyses of variance)を用いて解析を行った。すべての分析はSPSSソフトウェアを用いて行った。その結果、総軌跡長においては,開眼-閉眼の条件のみに有意な主効果を認めた(p<0.01)。外周面積に関しても開眼-閉眼の条件のみで有意な主効果を認めた(p<0.05)。速度に関しても開眼-閉眼の条件のみで有意な主効果を認めた(p<0.01)。前後動揺平均中心変位に関しても開眼-閉眼の条件のみで有意な主効果を認めた(p<0.01)。左右動揺平均中心変位に関しては,開眼-閉眼,音あり-音なし,人工内耳装用者-健聴者の3つの条件間に有意な相互作用を認めた(p<0.05)。その後の検定(post-hoc analysis)では,健聴者においては音の有無に関係なく開眼時と閉眼時での左右動揺中心変位に差は無かった。人工内耳装用者においては,音がない状態において左右動揺中心変位は閉眼時に人工内耳側に有意に偏倚した(p<0.05)が,音がある状態ではこの偏倚は消失した(p=0.53)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では人工内耳装用者において音刺激がないときはCOPが閉眼時に人工内耳側に偏倚したが,音刺激によってそのCOPの偏倚が消失することが明らかとなった。当初の計画では初年度に研究に必要な研究条件を設定することであったが,予定どおり負荷条件を決定することができた。当初の予想では初年度は有意な変化を明らかにすることまでは見込んでいなかったが,統計学的に有意差を出すことができた。その一方で小児の両側人工内耳患者に対する予備実験は患者の集中力を管理することが困難でやや遅れている。総合的に見て,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,今後はダミーヘッド録音した環境音を人工内耳に入力,頭位変化による空間認識能を除去した状態で,人工内耳装用が体平衡に与える影響を検討する。また,音刺激だけでなく視覚刺激を用いた研究も開始する。バーチャルリアリティーヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)を用いてダミーヘッド録音した音と仮想空間を組み合わせた環境で研究を継続する。研究の問題点としては頭位を検出できるVRHMDの価格である。この点に関しても近年若干ではあるが価格が低下しており,今年度の予定予算で研究を遂行できると考えている。VRHMDに用いる画像作成に関しては共同研究者と協力して遂行する予定である。また、昨年度に実施できなかった小児人工内耳患者に対しても,タブレットなどを用いて集中力を管理できるような環境を設定し,研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究自体は順調に進捗しており,特に成人に対する研究は当初の予定よりも条件設定を順調に行うことができた。その一方で,小児に対する研究は適切な条件設定を行うことができなかった。平成30年度の研究は成人を中心に仮想空間刺激を負荷するものであるため,平成29年度は成人の研究を若干繰り上げて実施した。その一方で,小児に対する研究は平成30年度に一部繰り越した。そのため小児での研究に要する機器使用料や被験者謝礼に要する額が次年度使用額となった。平成30年度は当初の予定どおりダミーヘッド録音とVRHMDを用いた研究を進めるとともに,小児においてはタブレットを用いて集中力を管理できる環境を開発する。
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Research Products
(1 results)