2017 Fiscal Year Research-status Report
Binaural hearing of patients with congenital and acquired deafness after bilateral cochlear implantation
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17K11348
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
加我 君孝 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 名誉臨床研究センター長 又はセンター長 (80082238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 修司郎 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00399544)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 両耳聴 / 人工内耳 / 方向感 / 時間差 / 音圧差 |
Outline of Annual Research Achievements |
両側とも人工内耳を使うbinauralによって得られる聴空間について、脳の統合作用の視点から先天聾と後天聾の両耳聴の脳の可塑性の違いを明らかにするべく取り組んだ。人工内耳登場以前の両耳聴研究は、気導あるいは骨導によるものであった。人工内耳はこれらと異なり蝸牛神経を直接電気刺激し脳にデジタルに神経信号を伝達する方法であって、中枢処理する脳のしくみも異なるものであることが疑われる。これは人類の脳にとっても初めての体験であり、その両耳聴による認知、学習、記憶、行動は全く新しい研究領域である。研究方法として、①Dichotic Listening test(DLT)による両耳分離能検査、②両耳語音認知による両耳統合脳検査、③音像定位検査による両耳融合と両耳時間差(ITD)と両耳強度差(IID)にわけて検査する。④eABRによる臨床生理を用いてbinauralで脳に生じる現象を研究し、両耳人工内耳による新たな脳の統合作用を臨床的に明らかにすべく、本年度は両耳人工内耳手術症例のうち先天性難聴群2例、後天性難聴群2例について、①の両耳分離能検査と③の音像定位検査による両耳融合能検査を実施し、両耳聴が実現されているか研究した。結果、両耳聴は①のDLTも③の方向感検査も成立することがわかった。①のDLTは手術の新しい耳の正答率が低く、③の方向感は両群ともIIDは成立するがITDは先天群は成立するが後天群はスケールアウトであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主に先天聾の2例と後天聾の2例について人工内耳の両耳聴効果に関する研究に取り組んだ。病態生理の異なる2群に対して①の両耳分離能検査であるDLTと③の両耳融合能検査である方向感検査を実施した結果、両側人工内耳下に両耳分離能も両耳融合能も成立することがわかり、大きな成果をあげることができた。ただし、この結果を分析するとDLTは手術の新しい耳の方の成績が悪いのは、まだ中枢の可塑性が向上していないためと思われ、長期的にどのように変化するか調べる必要がある。一方、方向感検査では、IIDは先天群も後天群も成立するが、ITD群は成立しなかった。これまでの脳神経疾患の研究ではITDは脳に障害があると成立しないことが多く、IIDは成立することがわれわれの研究でわかっている。恐らく後天群は手術後の期間が短く、中枢聴覚の可塑性が進んでいないことが疑われる。以上、研究は順調に進んでいるが、まだまだ解明すべき課題は多い。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は先天聾を中心に、今年度と同様に研究を継続し、最終年度では過去3年間の研究の追跡研究をしつつ、両側人工内耳によるBinaural装用が一次・二次聴皮質、連合野も関与し、処理されていることを明らかにする予定である。平成29年度の研究で次のような課題が明らかとなった。①の両耳分離能は先天性難聴群も後天性難聴群も成立するが、手術が新しい耳の方の成績が低い。これは人工内耳の装用年数が新しいほど聴覚認知の可塑性が遅いことを疑わせる。使用年数が何年も経つと左右差がなくなるか調べることが今後の課題である。③の両耳融合能はIIDは先天性難聴群も後天性難聴群も成立するが、ITDは先天性難聴群は成立し後天性難聴群は成立しない。この結果は予想外のことであった。なぜ後天性難聴群が成立しないのか解明したい。術後の時間が解決するものが器質的な原因なのか、フォローアップ検査により解明の手がかりを得たい。
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Causes of Carryover |
今年度はカルテ上の追跡研究であったため、購入物品がなかったが、次年度より検査に必要な専用用紙等を購入し、本研究を発展させ意義のある研究にする予定である。
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