2018 Fiscal Year Research-status Report
structural biology-based translational research in diseases with a focus on hereditary hearing loss
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17K11350
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
金子 寛生 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 細胞核輸送ダイナミクスプロジェクト, 客員研究員 (10349946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耳科学 / 構造生物学 / 遺伝性難聴 / 分子発症メカニズム / バイオインフォマティックス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年に引き続き、国立病院機構東京医療センターと連携し、全国の病院から集まる様々な遺伝性難聴のデータ解析を精力的に行った。対象遺伝子はこれまで行ってきた解析を含めると、EDNRB, TECTA, PDZD7, GJB2, OTOF, OPA1, NOG, KCNQ4 など多岐にわたる。今年度は、この中でも遺伝性難聴において特に重要度が高いGJB2について行った変異に関する解析結果を中心に述べる。 GJB2遺伝子は、connexin 26 (Cx26)として知られるGap junction beta-2 protein (GJB2) をコードする遺伝子であり、内耳のカリウムイオンの移動に重要な役割を果たしていると考えられている。これまでGJB2における様々な変異の重要性は報告されてきたが、構造生物学的見地からの議論はほとんどされていない。そこで、今回、我々は、GJB2遺伝子の変異が難聴にもたらす影響を分子論的な見地から解明し、診断法および治療薬の開発につなげることを目的として研究を行った。ここでは、GJB2の頻出変異としてよく知られるp.R143W変異を例にとり、連携研究者が得たもう片方のアレルの変異タイプを持つ難聴患者の聴力パターンデータを比較分析しながら考察を行った。 構造の観察やモデル計算の結果から、Arg143がTrpに変異することにより、Asn206およびSer139との水素結合が消失し、Tyr136とのπ-カチオン相互作用が消滅することが示唆された。特に、Asn206との水素結合は、膜貫通領域におけるhelix-3とhelix-4の安定化に大きく寄与していると考えられる。このため、R143W変異がヘリックス相互作用の不安定化を介し、Gap junction構造全体の揺らぎと歪みがもたらすことにより、難聴を引き起こしたものと結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝性難聴に伴う新規な変異の発見およびその分子発症機構を解明するという点においては、当初計画通り順調に進んでいると考える。しかし、診断および治療につなげるためには、解明した分子発症機構を裏付けるさらなる生化学および細胞生物学的な実験が必要となるが、この部分においては遅れている。これは、今年度途中から実験担当の連携研究者が失職し、さらに、データ解析担当予定の研究協力者が長期入院するなど、当初想定不可能かつ根幹に関わる問題が発生したことが原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、さらなる遺伝性難聴に伴う新規な変異の発見およびその分子発症機構の解明を行い、臨床応用に必要な情報の蓄積を行っていく予定である。これに加え、これまでに得た知見を基に、特定の遺伝子(例えばEDNRBやGJB2など)に絞り、生化学的な実験に基づき、新規な診断および治療法の開発につながる研究を進めていくことを計画している。しかし、先述のような連携研究者のリタイアにより、実験計画の変更ー特に、期間延長、外注費の増額とそれに伴う予算見直しなどーに関する大きな課題に取り組む必要が出てきた。データ解析のための研究協力者は、適任者2名を確保することができたので、代表者を含め3名に強化した体制で行っていく。ターゲット遺伝子と蛋白質を絞り、さらに、これまでに得た構造生物学的な知見に基づきバイオインフォマティックス的アプローチを最大限に活用することで、効率的な治療薬の探索を目指していく予定である。
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Causes of Carryover |
理由 当初予定していたデータ解析のための研究協力者が長期入院・療養になったため謝金項目が減ったことが主な理由となる。 計画 研究協力者が2名ほど確保できたので、次年度は適宜人件費・謝金を使用し、当初計画通りのデータ解析を行っていく予定。実験外注予定が増えたので必要に応じ充当する可能性あり。
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