2017 Fiscal Year Research-status Report
インスリンシグナルが嗅上皮障害後の再生過程に与える影響の検討
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17K11354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊田 周 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00555865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40334370)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 嗅上皮 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリン産生が低下した糖尿病マウスを用いて、嗅上皮障害後の再生過程を観察した。 各時間経過後(メチマゾール障害後3、7、14、28日)に脳をパラホルムアルデヒドで還流固定し、5μmの厚みで嗅上皮冠状断を作製し、嗅上皮の厚み、嗅細胞数を糖尿病マウスと正常マウスで比較した。インスリンは膵臓β細胞から産生されるため、このβ細胞を選択的に破壊するストレプトゾトシンをC57BL/6マウス(10週齢♂)に投与し糖尿病マウスを作成した。ストレプトゾトシンを120㎎/kgを3日間腹腔内に投与すると、投与したマウスの80%近くでⅠ型糖尿病マウスの基準となる空腹時血糖250㎎/dl以上を達成できた。次に糖尿病マウスあるいは正常マウス(コントロール)に対して、嗅毒性物質であるメチマゾール75mg/kgを腹腔内に投与した。メチマゾールで嗅上皮を障害すると、数日で新生嗅細胞が再生、分化し、障害後7-14日で成熟嗅細胞が出現し始め、障害後28日には、嗅細胞数、嗅上皮の厚み、成熟嗅細胞数が、障害前のレベルにまで回復していた。しかし糖尿病マウスでは、障害後14日以降で、インスリン分泌が正常なコントロールマウスと比較して嗅上皮が薄く、嗅細胞数が減少していた。さらに成熟嗅細胞の指標となるOlfactory marker protein(OMP) 陽性細胞数もコントロールマウスと比較して有意に減少していた。以上の実験を通して、新生嗅細胞は、インスリンシグナルに依存して再生・成熟することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究は行われ、予想通りの研究結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の2点を証明するために当初予定した計画通りに実験を進める。 1.嗅上皮障害後の新生細胞の機能代償は、インスリンシグナルが低下した糖尿病マウスにおいて破綻する。 2.適切な時期にインスリンシグナルを受けないと、新生嗅細胞は成熟せずに細胞死に陥る。
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Causes of Carryover |
当初想定していた以上に進展することができた実験系があった。特に嗅上皮での免疫染色では、少ない試薬数で十分な実験結果が得られ、試薬の購入費用を抑えることができたため。
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