2017 Fiscal Year Research-status Report
ナビゲーション情報を利用した内視鏡下鼻副鼻腔手術における手術技術定量評価法の開発
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17K11366
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
鴻 信義 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90233204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 亮一 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (30366356)
飯村 慈朗 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60317930)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 手術 / ナビゲーション / 副鼻腔 / 教育 / 内視鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
内視鏡下鼻副鼻腔手術(以下ESS)は、鼻副鼻疾患とくに慢性副鼻腔炎に対する術式として広く普及しているが、現在まで術者の技量を図る適切な尺度は存在していない。執刀経験数や経験年数からおおよその技量を予想しているに過ぎない。手術の安全性や技術を向上させより良好な術後結果を得るためには、術者の技量を別の尺度から客観的に定量評価できる手法が望まれる。 近年の医用画像処理技術や手術ナビゲーションの機能向上に伴い、術者の内視鏡(直の硬性内視鏡)と鉗子(上向き截除鉗子、マイクロデブリッダー)に動作追跡マーカーを装着し、これらの操作を定量解析することが可能となった。すなわち、術者の内視鏡操作と手術鉗子の作業的特徴を多角的に定量化・分析し、術者の技量レベルを推定しうる手法を構築した。その上で、実際のESSにおける熟練者および非熟練者の内視鏡と鉗子操作を分析している。分析指標は、内視鏡および鉗子の 1)先端速度・加速度、2)先端の分布密度、3)先端を中心にした回転量、4)内視鏡と鉗子の相対的速度・加速度、5)内視鏡と鉗子の先端間距離、6)内視鏡と鉗子の角度、などである。結果として、熟練者は非熟練者と比較して、鉗子の先端速度が速く、回転量が多い(術野を様々な方向から見て切除している)。一方で熟練者の方が内視鏡の回転量は多いがゆっくり動かす傾向があった。また、熟練者の方が内視鏡と鉗子との位置関係が安定しており、さらに鉗子操作を行う部位によって速度や加速度の傾向が異なりメリハリがあると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性副鼻腔炎に対してESSを施行予定の症例を選定し、患者頭部と硬性内視鏡および鉗子(上向き截除鉗子とマイクロデブリッダー)にトラッキングマーカーを装着して、熟練者(執刀経験300例以上)の厳重な指導の下、熟練者と非熟練者(執刀経験10例以上50例以下)それぞれが実際に執刀した。執刀は、第1段階;鼻茸切除、第2段階;鉤状突起切除、第3段階;篩骨胞切除、第4段階;第3基板除去、というステップで進めた。 上記各段階における内視鏡と鉗子の動作を定量化するため、1)先端速度・加速度、2)先端の分布密度、3)先端を中心にした回転量、4)内視鏡と鉗子の相対的速度・加速度、5)内視鏡と鉗子の先端間距離、6)内視鏡と鉗子の角度、7)内視鏡画面中心線と鉗子先端との距離、を解析指標とし、術者ごとの動作特徴を描出した。なお、検討対象となったESS症例は30例ほどあり、各対象症例の鼻茸スコアやCT scores、また同一症例での左右差などには差異を認めなかった。また、手術中にトラッキングマーカーが、術者の手の動き(捻り)や術具同士の干渉等によりナビゲーションシステムの赤外線で追尾できなくなることが数回あり、その都度マーカーの装着位置を改変し、トラッキングを改善させた。 結果として、熟練者は非熟練者と比較して、鉗子(上向き截除、マイクロデブリッダーとも)の先端速度が速く、また回転量が多い、すなわち術野を様々な方向から見て切除している事が確認できた。一方で熟練者の方が内視鏡の回転量は多いがゆっくり動かす傾向があった。また、熟練者の方が内視鏡と鉗子との位置関係が安定していた。さらに、ESSの各段階によって鉗子操作の速度や加速度の傾向が異なり、手術を行う部位(副鼻腔の前方か後方か)や鉗子操作に伴うリスクや難易度によって動作にメリハリをつけている事が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はESSの解析対象症例数をさらに増やし、データ蓄積をはかる。本定量方法の問題点があればこれを解決する。解析項目もさらに増やし、特に内視鏡と鉗子との相互動作に関しては、動作の円滑さと安全性を示す指標を新たに新出したい。動作解析をする鉗子の種類を増やし(弯曲した鉗子など)、また内視鏡は直視のみではなく30°から70°までの斜視鏡下動作での解析も進めたい。熟練者と非熟練者とで、ESSのどの段階でどのような動作が異なりやすいのかを検討する。とくに、それぞれの解析指標の中でどれが最も鋭敏に術者の技量を反映し得る指標であるかを臨床的観点も踏まえて検討する。非熟練者がトレーニングを積んでいくにつれて、最も技量を反映すると思われる解析指標がその後改善されていくかどうかを前向きに観察したい。その中では、解析結果をできるだけ点数化し、客観的な手術技量をよりわかりやすく評価できるようにもしたい。また手術終了直後あるいは手術中にも、内視鏡と鉗子動作の解析結果を部分的にでも術者へ提示できるようにシステムを更新し、特に非熟練者への迅速なフィードバックを目指したい。またフィードバックが手術習熟過程に及ぼすインパクトを評価したい。ESSの各段階において、それぞれを時系列により解析し、内視鏡と鉗子動作をより詳細に評価できるよう改良したい。ESSを施行する各症例の鼻茸スコアやCT scoresの差異、また同一症例での左右差などがある場合の補正手段を検討し、今後は各症例の重症度に関わらず常に客観的な評価ができるようにしたい。最終的な目標の大きな柱として、ナビゲーション情報を利用して術者のESS手技・技術を定量的に様々な因子をもって解析することで、安全かつ適切なESS技術を担保するための内視鏡と鉗子動作の客観的評価方法の確立に結び付けたい。
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Causes of Carryover |
本研究の進行が予想され、研究結果を随時国内外の学会で発表したい。また、手術症例が積み重なってくることより、手術トラッキング用の消耗品、データ保存と処理のための経費が計上される。
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Research Products
(1 results)