2017 Fiscal Year Research-status Report
革新的治療法開発に向けた治療抵抗性頭頸部癌における機能性RNAネットワークの探索
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17K11375
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
花澤 豊行 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90272327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 分子標的薬 / セツキシマブ / 頭頸部癌 / 扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部扁平上皮癌の治療課題である局所制御と臓器温存の更なる向上を図るために、外科的手術、化学療法・放射線療法が開発され治療成績の向上が認められている。しかしながら、進行症例や遠隔転移をきたした症例の予後は極めて不良であり、これら症例に対する有効な治療法が求められていた。この様な中、2012年に上皮成長因子受容体(EGFR)をブロックする事で癌細胞の増殖を阻害する分子標的薬(セツキシマブ)の使用が認可され、局所進行例や再発・転移例に使用され始めている。多くの症例で、初回治療に対する治療効果は期待できる。しかしながら、セツキシマブを用いた治療効果の継続は難しく、再発症例は少なくない。この様な背景の中、セツキシマブ併用放射線治療に対して、治療抵抗性を獲得した頭頸部扁平上皮癌組織を用いて、RNA-sequence により、頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルを作製し、癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA)および癌組織で発現が亢進しているマイクロRNA(癌促進型マイクロRNA)の探索を行った。発現が抑制されているマイクロRNAから、miR-150-5p、miR-150-3p、miR-199a-5p、miR-199a-3p、miR-199b-5p、miR-199b-5pに着目し、これらマイクロRNAの機能解析を施行した。その結果、これらマイクロRNAを頭頸部扁平上皮癌細胞に核酸導入する事により、癌細胞の遊走能、浸潤能を顕著に抑制した。更に、これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークを探索した結果、細胞外マトリックス受容体であるインテグリンを抑制する事が明らかになった。最近の研究から、細胞外マトリックスの発現異常は、癌細胞の増殖や浸潤に関与する事が示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【miR-150-5p、miR-150-3pの機能解析】 miR-150-5p、miR-150-3pに着目し、癌抑制機能と、これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークを探索した。miR-150-5pおよびmiR-150-3pの発現と臨床病理学的な解析を行った結果、これらマイクロRNAの発現が低い患者群では、発現が高い患者群と比較して、有意に予後が悪い事が明らかになった(P = 0.0091 and P = 0.0386)。頭頸部扁平上皮癌細胞株にこれらマイクロRNAを導入する事により、癌細胞の遊走能、浸潤能を抑制した事から、これらマイクロRNAは、癌抑制型マイクロRNAである事を証明した。更に、これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークを探索した結果、細胞外マトリックス受容体であるインテグリンを抑制する事を明らかにした。 【miR-199a-5p、miR-199a-3p、miR-199b-5p、miR-199b-5pの機能解析】 RNA-sequence により作成したマイクロRNA発現プロファイルから、miR-199 family (miR-199a-5p、miR-199a-3p、miR-199b-5p、miR-199b-5p)が、癌組織で発現が抑制されている事を認めた。これらマイクロRNAの機能解析から、全てのmiR-199 familyは、癌抑制機能を有する事を明らかにした。これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークとして、Focal adhesion経路を見出した。また、この経路に含まれる細胞外マトリックス受容体であるITGA3は、頭頸部扁平上皮癌で高発現しており、ITGA3は、癌促進機能を有する事を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、RNA-sequence により、頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルを作製し、癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA)および癌組織で発現が亢進しているマイクロRNA(癌促進型マイクロRNA)の探索を行った。発現が抑制されているマイクロRNAの機能解析から、複数の癌抑制型マイクロRNAを探索してきた。細胞内において、1種類のマイクロRNAは、極めて多くの機能性RNAを制御しており、また、機能性RNAは複数のマイクロRNAによって協調的に制御されている。この複雑な機能性RNAネットワークの解明は、頭頸部扁平上皮癌研究の新しい展開である。 今後の研究方針として、癌抑制型マイクロRNAが制御する分子ネットワークの探索を行い、頭頸部扁平上皮癌に特徴的な癌分子経路を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
マイクロRNAの機能解析に使用する試薬が、他の研究と共有できたため、試薬や消耗品にかかる費用が節約できた。
癌抑制型マイクロRNAが制御する分子ネットワークの探索のため、マイクロRNAを核酸導入した細胞の遺伝子発現解析を行う予定である。この解析に使用する消耗品費用と、遺伝子発現解析の外注費用に充てる。
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