2018 Fiscal Year Research-status Report
革新的治療法開発に向けた治療抵抗性頭頸部癌における機能性RNAネットワークの探索
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17K11375
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
花澤 豊行 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90272327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 頭頸部扁平上皮癌 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの集学的治療の進歩にも関わらず、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療成績は、未だ良好とはいい難い。その大きな要因の一つとして、初回治療後の、再発症例・遠隔転移症例の予後が極めて不良である事が挙げられる。癌細胞は、治療過程で治療抵抗性を獲得し、局所再発や遠隔転移に至る。再発・遠隔転移症例に対する有効な治療法は乏しく、緩和的治療が主に行われる。再発・遠隔転移を起こしたHNSCC細胞の遺伝子学的な研究は、臨床的に検体の採取が困難である事から、十分に研究されていない。 ヒトゲノム解析研究の成果として、ヒト細胞中には極めて多くの蛋白に翻訳されないRNA分子が転写されている事が明らかとなった。最近の研究から、これらのRNA分子は、生体内で様々な機能を有している(機能性RNA)事が明らかになりつつある。機能性RNAの1種である、マイクロRNAは、僅か19~22塩基の低分子RNAである。このRNA分子は、最終的に1本鎖のRNA分子として機能し、機能性RNA(蛋白コード・非蛋白コード遺伝子)の翻訳阻害や直接分解によりその発現制御をしている。マイクロRNAの特徴として、1種類のマイクロRNAは、数十~数百種類の機能性RNAの発現を制御していることから、マイクロRNAの発現異常は、細胞内の機能性RNA分子ネットワークの破綻を引き起こし、ヒト癌を含む様々な疾患に関与している事が報告されている。 この様な背景の中、治療抵抗性を獲得したHNSCCの臨床検体(初回治療後の再発症例の検体)から「治療抵抗性HNSCC・機能性RNA(マイクロRNA、蛋白コード遺伝子、蛋白非コード遺伝子)発現プロファイル」を作成した。この中から、発現が抑制されているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA候補)に着目し、その機能解析と、マイクロRNAが制御する分子ネットワークの探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA)および癌組織で発現が亢進しているマイクロRNA(癌促進型マイクロRNA)の探索を行った。発現が抑制されているマイクロRNAから、miR-150-5p(guide strand)およびmiR-150-3p(passenger strand)に着目し、これらマイクロRNAの機能解析を施行した。その結果、これらマイクロRNAをHNSCC由来細胞株に核酸導入する事により、癌細胞の遊走能、浸潤能を顕著に抑制した。これまでの概念では、マイクロRNAの生合成において、pre-miRNAから2本鎖のmiRNA duplexが形成される。そして、guide strand がRISCタンパクに取り込まれ標的遺伝子の制御を行う。これに対して、反対鎖のpassenger strandは、分解され機能を有しないとされている。miR-150-3pの機能解析から、passenger strandが、癌抑制型マイクロRNAとして機能している事を証明し報告した。更に、HNSCC において、miR-150-5pおよびmiR-150-3pが共通して制御する癌促進型遺伝子探索した。その結果、19遺伝子が候補となった。その中で、5遺伝子(SPOCK1、TIMP4、CAV2、NUBPL、KLHL29)の発現がHNSCC患者の予後に関与している事が明らかとなった。この中で、SPOCK1について機能解析を行い、癌細胞の増殖、浸潤、遊走を促進する癌促進型遺伝子である事を明らかにした。更にSPOCK1が制御する分子経路を探索した結果、Regulation of actin cytoskeleton、ECM8212;receptor interaction、TGF-beta signaling pathwayなどの分子経路を制御している事が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で作成したプロファイルには、これまでに解析が全く行われていない、マイクロRNAが多数存在しており(次世代シークエンサーを用いた解析のため)、本研究を推進する上で大きなアドバンテージである。申請者の学術的独自性と創造性は、治療抵抗性に至ったHNSCC検体から独自に作成した「機能性RNA発現プロファイル」から、解析が殆ど行われていないマイクロRNAを起点として、HNSCCに特徴的な分子経路を探索できる事である。 これまでの解析(機能性RNA発現プロファイル)から明らかとなった、HNSCCに特徴的なマイクロRNA(発現抑制されている)について、癌促進効果・癌抑制効果の検証と、マイクロRNAが制御する機能性RNAネットワークの解析を継続する。更に、HNSCCにおいて活性化している分子経路について、その経路を遮断する戦略を考案し、癌細胞の増殖や転移を抑制する事を、in vitro で検証する。分子経路を遮断には、siRNA、inhibitor(低分子化合物)、中和抗体を用いて、癌細胞の、増殖能、浸潤能、遊走能、アポトーシス誘導能等を指標にして検証する。有効性が確認できた分子経路については、既存の「薬」で、分子経路の遮断が可能か、ドラッグ・リポジションの戦略を考案し検証を進める。
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Causes of Carryover |
頭頸部扁平上皮癌の再発症例を中心に検体を収集しているが、今年度は再発症例が予想よりも少なかったため、検体の処理数が少なくなった。このため、使用額が余剰となったが、次年度も同様に再発症例からの検体収集を継続し、余剰金も活用してゲノム解析を行う予定でいる。
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Research Products
(1 results)