2017 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺がんに対するCAR T細胞とNKT細胞の併用療法に関する橋渡し研究
Project/Area Number |
17K11376
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
國井 直樹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00456047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊原 史英 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40779906)
本橋 新一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60345022)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / mesothelin / がん免疫 / 唾液腺がん / 免疫療法 / トランスレーショナル・リサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液腺がんは稀少がんであり、多くの場合、放射線や抗がん薬に抵抗性であるため、進行がんに対する術後アジュバント療法や再発・転移・手術適応外症例に対する治療法が確立しておらず、新たな治療法の開発が急務である。 再発・進行がんに対する免疫チェックポイント阻害薬治療が様々な癌種で適応となり、がん免疫療法が実地診療で行われる様になってきた。免疫チェックポイント阻害薬は主にT細胞の免疫抑制を解除することにより臨床効果が得られるが、多くの担癌患者ではT細胞機能が強力に抑制されているために、チェックポイント阻害だけでは不十分であり、新たな免疫療法の確立が求められている。 キメラ抗原受容体(CAR)はT細胞に遺伝子導入することにより、強力な抗原特異的T細胞を大量に増殖させることが可能であり、未だ臨床試験の段階ではあるが、主にB細胞性悪性腫瘍に対して目覚ましい成果が報告されている。しかし、固形がんに対してはCAR T細胞療法単独では十分な効果を上げてはおらず、新たなアプローチが必要と考えられている。 我々はこれまで進行頭頸部がん患者を対象として、NKT細胞細胞系を用いた免疫療法に関する臨床試験を行ってきた。頭頸部扁平上皮癌患者に対する臨床試験では進行がんに対しても部分奏功症例を認めており、現在、第Ⅱ相試験にて有効性の確認を行っている。また、唾液腺がんに対しても第Ⅰ相試験を行っている状況であり、機会将来の臨床応用を目指している。 本研究では唾液腺がんに対する新規免疫療法として、CAR T細胞療法とNKT細胞療法の併用が効果的であるとの仮説に対して検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、中皮腫や卵巣・膵臓の腺癌など多くの固形癌で過剰な発現が認められているmesothelin (MSLN) に着目した。まず始めに、ヒト唾液腺癌由来細胞株であるA-253と他の頭頸部がん細胞株の4種におけるMSLN発現を、抗MSLN抗体を用いてフローサイトメトリーにて解析したところ、A-253においてMSLNの高発現が確認された。さらに、当科で手術を受け、文書による同意が得られた唾液腺癌症例の手術検体16検体を用いてMSLN発現を免疫組織化学的に検証したところ、ほとんどの症例において様々な発現強度のMSLNが確認された。次に、マウス由来抗ヒトMSLN抗体クローンであるSS1から作製したCARを、レンチウイルスを用いてヒトCD8 T細胞導入し、高率にCARを発現するエフェクター細胞集団を調製した。これらの細胞群のMSLN特異的CAR発現率をフローサイトメトリーにて解析したところ、高純度のMSLN特異的CAR導入T細胞が調製されていることが確認された。これらのCAR T細胞を用いて各細胞株に暴露後の活性化能を検討したところ、暴露した腫瘍細胞のMSLN発現量に依存的にT細胞の活性化マーカーであるCD107aの発現上昇が認められた。しかもNKT細胞の添加により、これらの反応は増強された。さらに、CAR T細胞の各細胞株に対する細胞傷害活性をクロム放出試験にて検討したところ、MSLN発現腫瘍細胞に対する細胞傷害活性はNKT細胞との共培養にて上昇した。以上の成果より、唾液腺癌に対するMSLN特異的CAR導入T細胞と活性化iNKT細胞による養子免疫療法は有効な治療戦略になる可能性があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
唾液腺癌に対するCAR T細胞とNKT細胞の併用療法の臨床応用は前臨床試験が必要であり、臨床試験開始に向けたSOP等の各種書類の作成が必要である。現在、これらを順次、計画・立案・遂行している段階である。各種必要書類が整い次第、PMDAへの薬事戦略相談を行う予定である。
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