2018 Fiscal Year Research-status Report
鼻咽腔関連リンパ組織(NALT)の免疫記憶機能を応用した新規粘膜ワクチンの開発
Project/Area Number |
17K11389
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大堀 純一郎 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (90507162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
地村 友宏 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (10709596)
宮下 圭一 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (30585063)
黒野 祐一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80153427)
井内 寛之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90645285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 / アジュバント / インフルエンザ / 肺炎球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、各種の感染やワクチン接種をうけた人の既存のメモリー細胞を再活性化させることで、各種抗原に対する分泌型IgA(SIgA)を再賦活化する革新的なワクチン開発を目的とする。分泌型IgAは、病原微生物の感染前に防御を行う点、抗原に対する交差反応を持つ点で感染防御に有用である。これまでに我々は、CpG-ONDとplasmid Flt3 ligand(pFL)の2つのアジュバントが、抗原なしでインフルエンザ特異的なSIgA免疫応答をきたすことを報告している。この現象のメカニズムを明らかにすることで、既存の記憶免疫を有効利用して上気道に各種病原体に対するSIgAの分泌を促し、感染を防御する革命的なワクチン開発をおこなう。そのために、①一度獲得した免疫の再賦活化についての検討、②CpG-ODNとpFLの経鼻接種によるNALTのT細胞、B細胞の反応についての検討の2つの項目を明らかにする。①については肺炎球菌やインフルエンザウイルスに対するワクチン接種や、肺炎球菌感染あるいはインフルエンザウイルス感染などを一度経験させたマウスの抗体価を測定し、粘膜免疫が誘導できていることを確認した後、数か月の時間をおいて特異的抗体価が低下することを確認する。その後、アジュバントを投与することにより、粘膜免疫や全身系の特異的IgA、IgGなどが上昇するか否かを明らかにする。さらに、特異的抗体価の上昇が実際に感染防御に働くか否かを感染実験で確認する。②については抗原なしでの病原体特異的抗体価の上昇のメカニズムについて、メモリーT細胞の活性化、およびメモリーB細胞の活性化を検討する
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国立感染症研究所からのインフルエンザウイルスの分与をしていただき、インフルエンザ感染モデルマウスの作成を行っている。また本研究では、インフルエンザ感染マウス、ワクチン投与マウスにおける抗体誘導を起こした後に、抗体価が下がることを確認する必要があるが、抗体価が下がるのに時間がかかったため各種実験が遅れている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
pFLの作成とそのアジュバント効果について確認が取れたため、平成31年度からは当初予定していた以下の2点について研究を進める予定である。 ①CpG-ODN+pFLワクチンによる特異的抗体価の再上昇の検討 Balb/cマウスに、インフルエンザウイルススプリットワクチンを接種し、粘膜免疫を誘導する。このマウスを約半年間生存させ、血清抗体価を測定する。一度上昇した分泌型IgAや血清のIgGなどは半年ほどで低下しているはずである。この状態のマウスにCpG-ODNとpFLを合わせたアジュバントを投与する群、通常の免疫をする群に分けて一度のみのブーストをかける。ブースト後2週間程度の抗体価を測定し、比較することで抗原なしでも抗原特異的な抗体価の誘導ができることを確認する。また誘導された抗体価のIgGサブクラス測定を測定し、THバランスを検討するとともに、total IgG, total IgEなどを測定することにより有害作用が出現しないかを確認する。 ②CpG-ODNとpFLの経鼻接種によるNALTのT細胞、B細胞の反応についての検討 マウス脾臓からCD4+T細胞を分離し、さらにCD45RA陽性のナイーブT細胞とCD44陽性のエフェクターT細胞にわけ、CpG-ODN+pFLワクチンとCD11陽性の樹状細胞とを共培養することによりT細胞の活性化を測定する。T細胞の活性化の指標にはレプレッサー転写因子のFoxp1の発現をIntraceller FACSを用いて測定することとする。また、CpG-ONDには直接B細胞を刺激して抗体産生を誘導することが報告されている。このことをマウスの細胞をもちいて確認するとともに、memoryB細胞を分離して培養することで特異的抗体を産生させられるか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
研究の進歩状況がやや遅れたため、マウスのサンプル解析による予算執行が遅れたため次年度使用額が生じた。平成31年度には、マウスの実験とともに、サンプルの解析に費用がかかる予定である。また本研究で得られた知見を論文として公表するための英文校正費用、オープンアクセス掲載費用に使用する予定である。
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