2019 Fiscal Year Research-status Report
Oncolytic virotherapy for salivary carcinoma
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17K11397
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
江崎 伸一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (20620983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱島 有喜 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30343403)
五島 典 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (70201499)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解ウイルス / 単純ヘルペス・ウイルス / HF10 / 5FU |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞のみでウイルスが増殖し感染細胞を破壊させる、「腫瘍溶解ウイルス療法」が開発されてきた。我々は抗腫瘍単純ヘルペスウイルス1 型HF10 を分離し、HF10 が様々な腫瘍において抗腫瘍効果を示すこと、抗癌剤との併用で抗腫瘍効果が増強されることを、マウスモデル等を用いて明らかにしてきた。また、頭頸部扁平上皮癌に対する抗腫瘍効果をin vitro、in vivo の両面から明らかにした。ところで、唾液腺癌は放射線治療や抗癌剤が著効せず、新規治療法の開発が望まれている疾患である。今回はHF10 の唾液腺癌に対する抗腫瘍効果をin vitro、in vivo の両面から検討した。 ヒト、マウス由来の顎下腺癌細胞株に対するHF10の抗腫瘍効果を検討したところ、HF10はウイルス力価 (pfu) 依存的に殺細胞効果を認めたが、その抗腫瘍効果は、過去に検討した頭頸部扁平上皮癌への腫瘍効果より劣っていた。そこで、in vivoでは5-FUとの併用療法を検討した。まずは顎下腺癌細胞株をマウス耳下腺内に移植し、耳下腺腫瘍モデルマウスを作成し、HF10と5-FUのプロドラッグであるTS-1を用いた。併用療法によりマウス耳下腺腫瘍は著明に縮小し、一部のマウスにおいては腫瘍が消失した。 5-FUはDNA合成阻害剤であるため、HF10等の抗腫瘍ウイルスと併用すると抗腫瘍効果が減弱されることが知られている。そこで、5-FUで前処理を行った唾液腺癌細胞株に、一定時間をおいてHF10を感染させたところ、HF10の増殖が増強される結果となった。様々な蛋白発現を検討したが、細胞周期が原因と疑われ、現在検証しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroによる検討では、ヒト顎下腺癌細胞株、マウス顎下腺癌細胞株、ヒト顎下腺導管癌由来初代細胞株にHF10を感染させたところ、感染後の細胞では組織変性効果が認められ、また培養上清中には増殖したウイルスが認められた。次にHF10による抗腫瘍効果を検討したが、ウイルス力価 (MOI) 依存的な殺細胞効果を認めた。次に化学療法剤としてシスプラチン、5-FUを用意し、抗腫瘍効果を検討した。どちらの腫瘍も濃度依存的な殺細胞効果を認めた。 次に耳下腺腫瘍モデルマウスを作成し、5-FUのプロドラッグであるTS-1とHF10で治療を行った。HF10単独、TS-1単独では耳下腺腫瘍は縮小し、単独治療による抗腫瘍効果は認められたが、併用療法により腫瘍は著明に縮小し、一部のマウスでは腫瘍が完全消失した。 5-FUの前処置によりHF10抗腫瘍効果が増強された原因を探索するために、5-FUで前処置後にHF10を感染された。同時投与では5-FUはHF10の増殖を阻害することは知られているが、5-FUの前処置後、HF10を感染させることによりHF10の増殖が亢進した。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床の場において唾液腺癌は頭頸部扁平上皮癌より化学療法、放射線療法の効果が悪い印象がある。今回の検討でも、唾液腺癌細胞株は化学療法、腫瘍溶解ウイルス療法で濃度を上げると殺細胞性があがるが、頭頸部扁平上皮癌と比較するとやや抵抗性を示した。組織型が異なることにより化学療法剤だけでなく、腫瘍溶解ウイルスによる殺細胞効果も異なることが示唆された。 マウス耳下腺腫瘍モデルマウスを用いたin vivoにおける検討では、HF10、TS-1の併用治療により抗腫瘍効果の亢進が認められた。TS-1は代謝されて5-FUになるが、5-FUはDNA合成を阻害するため、HF10の増殖も阻害することが知られている。その原因を探るため、5-FUの前処置後にHF10を感染させて上清を採取したところ、5-FUの前処置によりHF10の増殖が亢進する結果となった。5-FUは細胞周期を止めることが知られていて、細胞周期の停止を解除してからHF10を感染させたことが、HF10の増殖を亢進させたと考えられた。現在、5-FUによる細胞周期停止後の細胞周期につき検討を行い、研究をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
実験はほとんど終え、現在研究をまとめて投稿準備中である。細胞培養に必要な費用と、投稿に必要な校正費、投稿料などを繰り越す予定である。
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