2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of head and neck cancer treatment targeting HIF1-alpha
Project/Area Number |
17K11410
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小澤 宏之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30327621)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 頭頸部癌 / 低酸素応答因子 / 転移 / ANGPTL4 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIF1-αを直接制御する薬は、実臨床における効果や副作用の問題で臨床応用に至っていない。そこでHIF1-αの転写因子について解析を行い、HIF1-α転写因子をターゲットとする治療開発について検討を行った。 ANGPTL4はHIF1-α転写因子の1つであり、Angiopoietinの構造類似タンパクで脂質代謝や血管新生因子としての働きを担っているといわれている。悪性腫瘍における役割については依然解明されていない点も多い。乳癌、直腸癌、前立腺癌、肝臓癌、腎細胞癌などではANGPTL4が癌の増殖や転移に関与していることが報告されており、ANGPTL4と腫瘍進展の関係性は、腫瘍の微小環境で生じる低酸素下で作り上げられるとされている。 当科で経口切除術を施行した下咽頭癌のうち、術前に化学療法を行っていない症例をを対象とし、ANGPTL4の免疫組織染色を行い、ANGPTL4発現と臨床病理学的指標との関連について後方視的に検討した。生存分析では、ANGPT4陽性(p<0.05)で全生存率(OS)を有意に延長した。病期がTis/T1症例、リンパ管侵襲陰性例、深達度が上皮(ep)/上皮下層(sep)症例で、ANGPTL4発現が陽性となる傾向がみられた。多変量解析では、OSについてANGPTL4発現が独立した予後規定因子であることが示された(HR 0.088、95%CI:0.010-0.749、p<0.05)。 過去の報告では、ANGPTL4は腫瘍細胞が転移を起こす際の血管内皮細胞の透過性に関わっているとされている。一方で相反する報告もあり、腫瘍の増殖に抵抗する機序については解明されていない。今回の結果から、頭頸部癌ではANGPTL4は腫瘍の転移を抑制する方向で働いていると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HIF1-α活性を制御する因子を用いた解析では、HSP90阻害やP300/CBP阻害によるin vitroの検討では想定通りの結果を得ることができなかったため。 このため、HIF1-α転写因子に注目し、その制御による治療開発を最終目標とし、ANGPTL4についての検討を行ったところ、良好な結果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、ANGPTL4のノックダウンの効果についてin vitroの解析を行っている。細胞増殖に加え遊走能や浸潤能への影響について評価する。またANGPTL4と血管新生との関係性について過去の報告が多いことから、本年度中にin vivoでの検討を開始し血管新生への影響について評価を行う。現時点ではANGPTL4阻害薬は商業ベースでは存在しないため、ドラッグスクリーニングにより、今後の治療開発の道筋を付けることを検討している。
|
Causes of Carryover |
概ね受領額と同程度の支出となったが、多少残額が出た。試薬の支出が想定より少なかったことが原因と考えられる。次年度に合算して使用をする予定である。
|
Research Products
(2 results)