2017 Fiscal Year Research-status Report
視神経篩状板異常に起因する網膜分離・剥離の病態解明
Project/Area Number |
17K11431
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
平形 明人 杏林大学, 医学部, 教授 (80173219)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 真 杏林大学, 医学部, 教授 (20232556)
北 善幸 杏林大学, 医学部, 講師 (30349873)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 乳頭ピット / 緑内障 / 篩状板 / 網膜分離 / 硝子体手術 / 網膜光干渉断層計(OCT) / 網膜剥離 / 眼圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象となる病態は、乳頭ピット、緑内障、強度近視、朝顔症候群、近視眼のコーヌス内ピットなどであった。対象数の多い乳頭ピット黄斑症(30眼)と緑内障眼の網膜分離(30眼)について、臨床経過と画像所見の特徴を検討したところ、自然経過で網膜分離が改善する症例が少なくないことが判明した。したがって、硝子体手術などの治療の適応に慎重を要することが示唆された。さらに、乳頭ピット黄斑症と緑内障眼の分離の鑑別が難しい症例が少なくないことも判明した。 1、乳頭ピット黄斑症の経過と画像所見の検討:乳頭ピット黄斑症で自然復位する症例は後部硝子体剥離(PVD)がなくても若年者の複数例でみられ、乳頭ピット上の異常組織に後部硝子体線維が強く癒着し、視力が良好で数カ月ごとに乳頭隣接の分離が軽減する傾向があった。乳頭ピット黄斑症のほとんどの症例で乳頭ピット上に硝子体線維に連続する膜状組織が観察された。視力低下進行例では、外顆粒層から外網状層の分離幅が拡大し、黄斑剥離を合併した。全例で後部硝子体は未剥離で硝子体手術でPVDを乳頭周囲で作成することで、まず分離が軽快し続いて黄斑剥離が消失した。その過程に平均約1年を要した。約15%の症例で初回手術のみでは復位せず、再手術で復位した。 2、緑内障眼の網膜分離の経過と画像所見の検討:乳頭周囲の網膜分離で視力良好例では自然軽快する症例が少なくなかった。特に、すでにPVDが存在する症例では緑内障治療薬の点眼追加で自然復位する症例が多かった。進行例に対する硝子体手術では、網膜は復位するが、術後黄斑円孔の合併が約30%にみられ、手術法の改善を要することが判明した。 3、硝子体手術の合併症の検討:朝顔症候群で網膜下に多数のシリコンオイルの粒の迷入、緑内障眼で内境界膜剥離後の黄斑円孔あるいは緑内障性視野欠損の進行例がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑内障眼と乳頭ピットに合併する網膜分離症例は比較的多数例となり、臨床経過と網膜光干渉断層計測(OCT)による画像解析のデータは集積されてきた。初年度の検討から自然復位例がこれまでの報告よりも少なくないことが示唆され、進行例と比較検討を行っている。一方、症例を紹介されるに際し、乳頭ピットと緑内障眼の網膜分離症例の鑑別が難しいことや、その他の疾患として誤診で紹介される症例が多くみられた。そのため、研究計画の一つである本病態の治療経過を検討するための多施設のアンケート調査を施行するための課題が判明した。つまり、アンケートを施行するためには本病態の明確な診断が必要で、そのために鑑別疾患における鑑別点の提示がアンケート施行前に必要であることが判明した。よって、アンケート調査に関する本研究の項目の変更を必要と考えられた。シリコン素材の眼球モデルは予備実験において作成できたが、篩状板部位に相当する部位の変形の観察法が定まらず、次年度でその測定法の工夫の課題が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
網膜分離進行例で硝子体手術を施行した症例で非復位や合併症を生じた症例の臨床的特徴や画像所見の特徴を検討し、治療法の改善を推進する。また、アンケート調査を準備するために、鑑別診断の診断的特徴を整理する。さらに、シリコン素材モデル眼の乳頭部位での眼圧の変動における変形の測定方法を開発する。
|
Causes of Carryover |
進捗状況で報告したように、多施設のアンケート調査を施行するにあたり鑑別診断を明確にすることが判明した。現在鑑別診断の特徴について検討している段階であり、アンケート調査を初年度には施行できなくなり、次年度に使用額を繰り越した。
|
Research Products
(6 results)