2018 Fiscal Year Research-status Report
視神経篩状板異常に起因する網膜分離・剥離の病態解明
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17K11431
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
平形 明人 杏林大学, 医学部, 教授 (80173219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 真 杏林大学, 医学部, 教授 (20232556)
北 善幸 杏林大学, 医学部, 講師 (30349873)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳頭ピット黄斑症 / 緑内障 / 強度近視 / 網膜分離 / 網膜剥離 / ヒステリーシス / 硝子体手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度に、対象疾患となる乳頭ピット黄斑症、緑内障眼に伴う網膜分離において、自然軽快する症例や硝子体手術を適応しても難治となる症例があることがわかった。また、治療成績を検討するための全国調査の項目を検討したところ、本病態の鑑別診断が難しい点が課題となった。それらの課題を探求するために、これまでに硝子体手術をした症例の成績を詳細に分析し、さらに鑑別診断のために重要となる所見を検討した。さらに、本病態が眼内液の篩状板欠損・脆弱部位における水流の影響を受ける可能性が高く、眼球のヒステリーシスが眼内充填状態によって変化するかどうかを検討した。 (1)乳頭ピット黄斑症の硝子体手術施行例のうち、再手術を要したのは34眼中4眼であった。その危険因子を検討したところ、乳頭ピットに連続して網膜剥離が存在する所見であった。この難治例に対し、網膜下液排液と乳頭ピット縁のレーザー凝固と長期ガスタンポナーデが復位に有用であった。 (2)乳頭ピット黄斑症として紹介された症例の約50%が誤診であった。大学病院などの中核病院からの紹介でも誤診が目立った。もっとも多かったのは、緑内障眼の網膜分離、続いて軽度眼球形態異常に伴う硝子体網膜界面症候群であり、50歳以上の症例が大半であった。したがって、現状で全国調査を施行しても対象疾患の診断が不確かな可能性が高く、鑑別診断のための重要な所見を整理することが課題となり次年度にその特徴をまとめたい。 (3)眼球のヒステリーシスは硝子体手術後の硝子体内容物(ガスなど)によって変化し、ガスが消失したのち術前に戻るものと戻らないものがあった。その異なる原因を検索することが求められる。篩状板異常をきたす強度近視眼や緑内障眼の網膜分離・剥離の硝子体手術後に網膜が復位しても視野欠損が進行する症例もあり、続発性緑内障の検査にこれらの疾患においてヒステリーシスを検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳頭ピット黄斑症においては硝子体手術の有用性と難治な場合の危険因子が整理できてきた。これまでの乳頭ピットの病理報告や硝子体手術による頭蓋内あるいは網膜下へのガスやシリコーンオイル迷入の合併症の機序を推測すると、篩状板欠損部における硝子体牽引が網膜分離の契機となり、硝子体手術が奏効する機序が推考された。 乳頭ピット黄斑症と類似した緑内障眼や強度近視眼に合併する網膜分離が高齢者に少なからず存在することが確認された。そしてかなりの施設で適切に診断されずに硝子体手術などが施行されていることも課題であることが判明した。そこで、現状での全国調査では適切な診断に基づく調査にならない恐れが高く、本研究において全国調査のための鑑別所見を整理することを目的の一つに変更した。 また、緑内障眼に合併する網膜分離の一部が、眼圧を低下させることで自然軽快する症例もあることが経験された。さらに、硝子体手術を適応した場合、術後に視野欠損が進行する症例も見られることがわかった。それが硝子体手術法によるものなのか眼圧以外の要因、例えば眼球のヒステリーシスによるものか検討する必要があることが示唆された。そこで、本研究の最終年度に硝子体手術によるヒステリーシスの変化についてさらに検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)乳頭ピット黄斑症における硝子体手術難治所見のOCTの分析とその治療法の検討。 (2)緑内障眼や強度近視眼の硝子体手術後の視野異常の進行を検討するために術後のOCT画像解析と視野解析の相関及びこれらの疾患の術前後の眼球ヒステリーシスの検討。 (3)シリコン素材で作成した眼球モデルで眼球内容物を変化(液体、ガス、シリコーンオイル、ヒアルロン酸)させることで眼球変形能が異なることを報告したが、それらのモデルにおけるヒステリーシスの関係を検討。 (4)本研究の対象疾患の治療成績を全国調査するための適切な診断を下すために、鑑別に必要な画像所見を整理する。 以上の検討から篩状板異常に合併する網膜分離・剥離の発生機序の考察と治療法の改善を図る。
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Causes of Carryover |
本対象疾患の治療成績を全国調査する上で、かなり誤診されている状況が判明した。したがって、現状で全国調査する意義は少ないと考え、全国調査のための調査費用は未使用額となった。この未使用額は、将来の調査のための確実な診断における画像所見を整理するための消耗品や学会参加費や旅費に使用する。さらに、硝子体手術後の合併症を検討するために眼球のヒステリーシスというものが硝子体手術後に変化することが昨年度の検討で疑われたため、シリコン素材眼球モデルのヒステリーシス測定のための消耗品に使用する。
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Research Products
(15 results)