2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト眼発生モデルSEAMを用いた角膜上皮発生機構の解明
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17K11480
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 竜平 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70535278)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 角膜 / 多能性幹細胞 / 眼発生 / 分化 / ラミニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的としては、ヒト多能性幹細胞を用いて角膜をはじめとする眼組織の発生機構を解明することを目的としている。本年度においては、我々の開発した眼組織誘導技術(SEAM法)を用いて、眼発生に対する①各種阻害剤等および②ECMの影響について詳細に検討を行った。①については、特にBMPやTGFBシグナル阻害によってSEAM形成が阻害されることが明らかとなり、特にBMP4阻害では角膜上皮領域が選択的に消失した。定量的PCRの結果からはこれらの阻害では特に表面外胚葉マーカーのp63などの発現が著しく低下した。また、レチノイン酸の添加によっても同様に角膜上皮の発生が減弱したが一方で、p63発現は上昇し、眼細胞マーカーPAX6の著しい低下が認められた。これらの結果から、少なくとも角膜上皮発生にはBMPシグナルが重要であることが示唆された。ECMに関しては、ラミニンの各アイソフォーム(111、211、332、411、511)E8フラグメントおよびマトリゲル、ビトロネクチンをコーティングした培養皿上で、SEAM法による眼細胞分化を実施した。その結果、標準使用するラミニン511上では、多系統の眼細胞を含む典型的な多帯状コロニーが形成されるのに対して、他のECMではいずれも典型的な分化形態を示さないことが明らかとなった。さらに興味深いことに、角膜上皮分化については、ラミニン511および332を用いた場合でのみ高い誘導効率を示し、さらにその誘導効率はラミニン332で高いことが示された。また、発生期の眼球組織の免疫染色を実施したところ、角膜上皮には主にラミニンα3、α5が発現していることが示された。以上の結果から、少なくとも角膜上皮発生には、発生期角膜において実際に発現しているECMがその分化誘導を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに、①液性因子、②ECMによる眼組織・角膜上皮発生への影響について調べることが出来た。また、本年度に得られた結果から特に、角膜発生に関する新しい知見が得られた。これらの結果に基づいて、計画通り分化制御機構の詳細についての検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はほぼ計画通り研究を推進することが出来た。そのため来年度においては当初の計画通り、液性因子による角膜分化制御機構の解明および足場ECMによる眼分化方向性の制御機構について詳細な検討を実施予定である。
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Research Products
(13 results)