2017 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを用いた自己免疫性ぶどう膜炎の炎症制御と神経保護作用
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17K11489
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
渡邊 交世 杏林大学, 医学部, 講師 (90458901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 眼炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA (miRNA)は、20-25塩基からなるnon-coding RNAであり標的mRNAの発現を制御することで細胞増殖・発生・分化、アポトーシス、代謝など様々な生体反応を制御していることが知られている。以前に我々はぶどう膜炎とmiRNAとの関連について検討するため、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 (EAU)を用いてEAUの発症初期、炎症極期、消退期の眼局所におけるmiRNAの発現を網羅的に検討した。その結果、炎症極期においてmiRNA-223、142、146などのmiRNA発現が上昇、またはmiRNA-124を含めた特定のmiRNAの発現が低下していることを報告した(Watanabe et al.Br J Ophthalmol.100:425-31,2016)。今年度はEAUにおける全身のmiRNAの変動について検討するため炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現について解析した。その結果、コントロール群(抗原接種前)に比較して、抗原接種後14日目のEAU炎症極期において2倍以上発現の上昇したmiRNAが38分子、0.5倍以下に低下したmiRNAが54分子認められた。10倍以上の発現の上昇を認めたmiRNAとしてmiRNA-708、208、615、1/10以下に発現が低下したmiRNAとしてmiRNA-297、377、680などを認めた。さらに眼局所で発現の上昇がみられたmiRNA-142、146、223が血清中でも発現上昇しており、ぶどう膜炎の活動性性を示すバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。次年度はこれらのmiRNAがどのような細胞から産生されているのかを検証するため末梢血中から単核球を採取、T細胞、B細胞、単球へと分離し、どの細胞分画においてmiRNAの発現が上昇、または低下しているのかさらに詳細な検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の変動、2) マクロファージや抗原提示細胞に対して免疫抑制作用が報告されているmiRNA-124 (miRNA -124 mimics)を実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の誘導期、および発症期に局所、または全身投与しEAUの抑制効果の有無の臨床的、病理組織学的な検討を予定した。 1)については抗原接種後14日目のEAU炎症極期に血清を採取し、microRNA cardを用いてmiRNAの発現について網羅的な検討を行った。その結果、2倍以上発現の上昇したmiRNAが38分子、0.5倍以下に低下したmiRNAが54分子認められた。10倍以上の発現の上昇を認めたmiRNAとしてmiRNA-708、208、615、139、194、1/10以下に発現が低下したmiRNAとしてmiRNA-297、377、680、375、10a、34などを認めた。さらに眼局所で発現の上昇がみられたmiRNA-142、146、223が血清中でも上昇していた。これらのmiRNAには血管平滑筋のストレス刺激に伴い上昇し、抗炎症分子として作用するものが多数含まれており、miRNAを介したぶどう膜炎に対する炎症制御作用が全身的にも生じている可能性が考えられた。また眼局所で高発現しているmiRNAが血清中で上昇していることから眼炎症が血清中のmiRNAの発現に影響している可能性が示唆された。2)については1)の実験に時間を要したため投与量や投与時期について調整中であり、EAUに対するmiRNA-124の炎症抑制効果について現在検討中である。以上から中程度の目標達成度と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画として平成29年度に続いて1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の解析、2) マクロファージや抗原提示細胞に対して免疫抑制作用が報告されているmiRNA-124をEAUの誘導期、および発症期に投与しEAUの抑制効果の有無の臨床的、病理組織学的な検討を予定する。 1)については、これまでの結果から実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したラットの末梢血(血清)中のmiRNAの発現が炎症極期において無処置群に比較して、2倍以上発現の上昇したmiRNAが38分子、0.5倍以下に低下したmiRNAが54分子認められている。今後はこれらのmiRNAの発現がEAUの発症前、およびEAUの消退期においてどのように推移しているのか経時的な発現の変動を検討する。また、炎症極期で発現の上昇、または低下したmiRNAが、血液中のどのような細胞集団(T細胞、B細胞、単球)から発現しているのか検討するため各免疫担当細胞に特異的な抗体を用いて細胞を分離し、small RNAを含めたRNAを抽出、miRNAの遺伝子発現について確認する。 2)についてはmiRNA-124をトランスフェクション試薬であるリポフェクトアミンと混合する。対照群としてnon-specific miRNAを合成、これらを抗原接種時、接種後7日目、14 日目に硝子体内に注入、炎症所見をスコア化、免疫後21日目に屠殺して眼球を摘出、病理組織標本を作成し、EAUに対する炎症抑制効果について検討する。また摘出した網膜におけるIL-1、IL-6、TNF-a、MCP-1の発現をELISA法と定量PCR法で確認する。またmiRNA-124の細胞内への導入を評価するため、Cy3標識miRNA mimicsを導入し、蛍光顕微鏡を用いて局在部位を確認する。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究計画として平成29年度に続いて1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の解析、2) miRNA-124を用いたEAUの炎症抑制効果の検討を予定した。今年度は上記1)の実験の施行、追実験に時間を要したため、2)の実験を完遂することができなかった。2)の実験は平成30年度に繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。 使用計画 平成30年度の研究計画として1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の解析、2) マクロファージなどの免疫担当細胞に対して免疫抑制作用が報告されているmiRNA-124をEAUの誘導期、および発症期に局所投与し、EAUに対する炎症抑制効果について検討を予定する。1)ではmiRNAの末梢血中の発現についてEAUの発症前、炎症極期、EAU消退期にどのように推移しているのか検討する。また炎症極期で発現の上昇、または低下したmiRNAが、血液中のどのような細胞集団(T細胞、B細胞、単球)から発現しているのか各細胞特異的な抗体を用いて分離・採取し、miRNAの発現を検証する。2) についてはmiRNA-124を網膜抗原ペプチド接種時、接種後7、14日目に硝子体内に投与し、EAUに対する炎症抑制効果を臨床的・病理組織学的に検討する。
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