2018 Fiscal Year Research-status Report
microRNAを用いた自己免疫性ぶどう膜炎の炎症制御と神経保護作用
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17K11489
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
渡邊 交世 杏林大学, 医学部, 講師 (90458901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ぶどう膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA (miRNA)は、20-25塩基からなるnon-coding RNAであり標的mRNAの発現を制御することで細胞増殖・発生・分化、アポトーシス、代謝など様々な生体反応を制御していることが知られている。以前に我々はぶどう膜炎とmiRNAとの関連について検討するため、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎 (EAU)を用いてEAUの発症初期、炎症極期、消退期の眼局所におけるmiRNAの発現を網羅的に検討した。その結果、炎症極期においてmiRNA-223、142、146などのmiRNA発現が上昇、またはmiRNA-124を含めた特定のmiRNAの発現が低下していることを報告した(Watanabe et al.Br J Ophthalmol.2016)。平成30年度はEAUにおける全身のmiRNAの変動について検討するためEAU発症前(免疫後7日目)、炎症極期(14日目)、炎症消退期(21日目)における末梢血(血清)中のmiRNAの発現について解析した。その結果、抗原接種前に比較して、抗原接種後14日目のEAU炎症極期において3倍以上発現の上昇したmiRNAが7日目で98分子、14日目で19分子、21日目で9分子、1/3倍以下に低下したmiRNAが0分子、14日目で43分子、21日目で85分子であった。さらに免疫後14日目の眼局所で発現の上昇がみられたmiRNA-142、146、223がEAU発症前から血清中で発現の上昇を認めており、ぶどう膜炎の発症を予測するバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。次年度はこれらのmiRNAが血液中の細胞から産生されているのかを検証するため末梢血中から単核球、およびリンパ節や脾臓からmiRNAを抽出し、血清中のmiRNAの発現との関連についてさらに検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の発症前、炎症極期、炎症消退期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の変動、2) マクロファージや抗原提示細胞に対して免疫抑制作用が報告されているmiRNA-124 (miRNA -124 mimics)を実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の誘導期、および発症期に局所、または全身投与しEAUの抑制効果の有無の臨床的、病理組織学的な検討を予定した。 1)についてはEAU発症前(免疫後7日目)、炎症極期(14日目)、炎症消退期(21日目)における末梢血(血清)中のmiRNAの発現について解析した結果、抗原接種前(免疫前)に比較して、抗原接種後14日目のEAU炎症極期において3倍以上発現の上昇したmiRNAが7日目で98分子、14日目で19分子、21日目で9分子、1/3倍以下に低下したmiRNAが0分子、14日目で43分子、21日目で85分子であった。さらに免疫後14日目の眼局所で発現の上昇がみられたmiRNA-142、146、223がEAU発症前から血清中で発現の上昇を認めており、EAUの発症前から抗炎症分子として作用するものが多数含まれており、miRNAを介したぶどう膜炎に対する炎症制御作用が全身的にも生じている可能性が考えられた。またEAUの炎症極期の眼局所で高発現しているmiRNAがEAU発症前の血清中で上昇していることから血清中のmiRNAが発症を予測するバイオマーカーとして有用である可能性があり、今後もさらに検討を進めていく予定である。2)については1)の実験に時間を要したため投与量や投与時期について調整中である。以上から中程度の目標達成度と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の研究計画として平成30年度に続いて1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の末梢血(血清)中におけるmiRNAの発現の解析、2)miRNAが血液中の細胞由来か、または抗原特異的なリンパ球由来かを検証するため末梢血中から単核球、およびリンパ節や脾臓からmiRNAを抽出し、血清中のmiRNAの発現との関連、3) miRNA-124 (miRNA -124 mimics)を用いたEAUの抑制作用、について検討を予定している。 1)については、これまでの結果から実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を誘導したラットの末梢血(血清)中のmiRNAの発現が無処置群に比較して、EAU発症前、EAU極期、EAU消退期で変動していることが確認された。今後はこれらの結果を踏まえ、発現の上昇、または低下したmiRNAが、血液中の単核球から発現しているのか、また抗原特異的なリンパ球由来なのかを検討するため各炎症の病期別に血液を採取し単核球を分離、small RNAを含めたRNAを抽出、miRNAの遺伝子発現について確認する。また抗原刺激したリンパ球と刺激をしていないリンパ球でmiRNAの発現に違いがみられるか検討する。2)についてはmiRNA-124(miRNA-124 mimi)をトランスフェクション試薬であるリポフェクトアミンと混合し、濃度調整する。対照群としてnon-specific miRNAを合成し、リポフェクトアミンと混合する。これらの試薬を抗原接種時、接種後7日目、14 日目に硝子体内に注入し、EAUに対する炎症抑制効果について検討する。また摘出した網膜におけるIL-1、IL-6、TNF-a、MCP-1の発現をELISA法と定量PCR法で確認する。またmiRNA-124の細胞内への導入を評価するため、Cy3標識miRNA mimicsを導入し、蛍光顕微鏡を用いて局在部位を確認する。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究計画として1) 実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の炎症極期における末梢血(血清)中のmiRNAの発現の解析、2) マクロファージや抗原提示細胞に対して免疫抑制作用が報告されているmiRNA-124をEAUの誘導期、および発症期に投与しEAUの抑制効果の有無の臨床的、病理組織学的な検討を予定した。今年度は上記1)の実験の施行、追実験に時間を要したため、2)の実験を完遂することができなかった。2)の実験は次年度に繰り越しとなったため、次年度使用額が生じた。 令和元年度は1)EAUの末梢血(血清)中におけるmiRNAの発現解析、2)血清中miRNAの産生細胞の検証、3) miRNA-124 (miRNA -124 mimics)を用いたEAUの抑制作用、について検討を予定している 1)ではmiRNAの末梢血中の発現を定量PCR法を用いてEAUの各病期でどのように推移しているのか検討する。2)はEAUを誘導したラットの血清で発現の上昇、または低下したmiRNAが血液中の単核球由来か、また所属リンパ節や脾臓から産生されているのかを確認するため単核球、培養したリンパ節細胞、または脾臓細胞からsmall RNAを抽出し、miRNAの発現プロファイルを検証する。3)はmiRNA-124を網膜抗原ペプチド接種後に硝子体内に投与し、EAUに対する炎症抑制効果を検討する。
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