2017 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス関連分子Nrf2を介した自己免疫性ぶどう膜炎の制御
Project/Area Number |
17K11490
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
慶野 博 杏林大学, 医学部, 准教授 (90328211)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ぶどう膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体には過剰な酸化ストレスを感知し、それらを消去する生体防御遺伝子の発現を誘導する分子機構が備わっている。その中でKelch-like ECH-associated protein 1 (Keap1)によって調整されるNuclear factor-E2-related factor 2 (Nrf2) (Nrf2-Keap1システム)が細胞保護に作用する重要な転写因子として知られている。本研究課題では抗酸化ストレス分子であるNrf2-Keap1システムに注目し、ぶどう膜炎の病態におけるNrf2分子の作用について検討するため、1)Nrf2活性化剤であるジメチルフマル酸(DMF)投与による実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の抑制の有無、DMFによる抗炎症作用、網膜細胞の保護効果についての検討、2)Nrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を用いてEAUを誘導し野生型マウスとNrf2 KOマウスとぶどう膜網膜炎の重症度の比較からEAUにおけるNrf2分子の関与について検討を予定した。 1)ではEAUを誘導したラットにDMFを100 mg/kgで内服投与を行い、 EAUの抑制効果を検討した。基剤投与群、DMF投与群ともに網膜抗原ペプチド投与後10日目前後からEAUの発症がみられ、15日目前後でぶどう膜網膜炎の炎症極期を迎え、その後眼内の炎症は消退した。両群のEAU前眼部炎症スコアを比較したところ免疫後15日目から17日目にかけてDMF投与群でEAUスコアの有意な低下がみられた。今後は抗酸化ストレス分子の発現誘導効果、Th1およびTh17細胞関連免疫反応の検討からEAUにおけるDMFによる抗炎症作用、網膜細胞の保護効果についてさらに検討を行う。2)については現在Nrf2マウスの繁殖中であり次年度に施行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は抗酸化ストレス分子であるNrf2-Keap1システムに注目し、ぶどう膜炎の病態におけるNrf2分子の作用について検討するため、1)Nrf2活性化剤であるジメチルフマル酸(DMF)投与による実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の抑制の有無、抗酸化ストレス分子の発現、Th1およびTh17細胞関連免疫反応の検討からDMFによる抗炎症作用、網膜細胞の保護効果についての検討、2)Nrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を用いてEAUを誘導し、野生型マウスとNrf2 KOマウスとぶどう膜網膜炎の重症度の比較からEAUにおけるNrf2分子の関与について検討を予定した。 1)についてはEAUを誘導したラットにDMFを100 mg/kgで内服投与を行い、 EAUの抑制効果を検討した。基剤投与群、DMF投与群ともに網膜抗原ペプチド投与後10日目前後からEAUの発症がみられ、15日目前後でぶどう膜網膜炎の炎症極期を迎え、その後眼内の炎症は消退した。両群のEAU前眼部炎症スコアを比較したところ免疫後15日目から17日目にかけてDMF投与群でEAUスコアの有意な低下がみられ、DMFによるぶどう膜炎に対する抗炎症効果が確認された。今後は抗酸化ストレス分子の発現誘導効果、Th1およびTh17細胞関連免疫反応の検討からEAUにおけるDMFによる抗炎症作用、網膜細胞の保護効果についてさらに検討を行う。2)について野生型、Nrf2 KOマウスを繁殖中であり次年度以降でEAUにおけるNrf2分子の関与、抗酸化ストレス分子によるEAU抑制効果について検討を進める予定である。 以上の結果より予定していた実験計画は1)はほぼ計画通りに施行、2)はマウスの繁殖に時間を要し、EAUの誘導実験が施行できていないため平成29年度の研究課題は中程度の達成状況と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は1) DMF投与による実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の作用機序の検討、2) Nrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を用いたEAUへのNrf2分子の作用に関する検討を予定している。平成29年度の実験結果からDMFを免疫直後から連日で内服すると対照群に比べてEAUスコアが有意に低下することが確認された。今年度はその作用機序について検討するためDMF投与による抗酸化ストレス分子(Nrf2、SOD1、HO-1)の遺伝子発現、眼球の病理組織標本を作成し、免疫染色にてCD68陽性細胞中のNrf2陽性細胞、HO-1陽性細胞の発現を検討、脾臓からリンパ球を分離しTh1およびTh17細胞関連のサイトカインをELISA法を用いて測定することでDMFによる抗炎症作用、網膜細胞の保護効果についての検討を行う。またin vitroでの検討においてヒト網膜色素上皮細胞株をリポポリサッカロイド(LPS)で刺激時にDMFと共培養することでLPS刺激によるIL-8、MCP-1などの炎症性ケモカインの発現が抑制されるか検討する。さらにDMFによる治療効果を評価するためにEAU発症直後からDMFの投与を開始しEAUに対する治療効果がみられるか検討する。2)についてはNrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を作成し、EAUを誘導する。野生型マウスとNrf2 KOマウスのEAUスコアや病理組織像を比較することでぶどう膜炎におけるNrf2分子を介した抗酸化ストレス分子の炎症抑制、神経網膜保護効果について検討する。
|
Causes of Carryover |
今年度はEAUに対する DMFの投与量、投与期間についての予備実験に時間を要したため作用機序に関する実験を完遂することができなかった。そのためDMF作用機序の検討について次年度に行う予定である。またNrf2 KOマウスを用いた実験も予定していたがマウスの繁殖に時間を要しておりEAUの誘導実験を行うことができなったため次年度に繰り越しとなった。以上のことから次年度使用額が生じた。 使用計画 平成30年度は1) DMF投与による実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の作用機序の検討、2) Nrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を用いたEAUへのNrf2分子の作用に関する検討を予定している。1)についてはDMFによるEAUのDMF投与による抗酸化ストレス分子の遺伝子発現、眼球病理組織におけるCD68陽性細胞中のNrf2陽性細胞の発現を検討、Th1およびTh17細胞関連のサイトカイン測定、DMFによる治療効果を評価するためにEAU発症直後からDMFの投与を開始しEAUに対する治療効果がみられるか検討する。2)についてはNrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を作成し、EAUを誘導、野生型マウスとNrf2 KOマウスのEAUスコアや病理組織像を比較しNrf2分子を介した抗酸化ストレス分子の炎症抑制、神経網膜保護効果について検討する。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Investigation of the association between IL10 gene polymorphisms and Vogt-Koyanagi-Harada disease in a Japanese population.2017
Author(s)
Higashi K, Meguro A, Takeuchi M, Yamane T, Kitaichi N, Horie Y, Namba K, Ohno S, Nakao K, Sakamoto T, Sakai T, Tsuneoka H, Keino H, Okada AA, Takeda A, Fukuhara T, Mashimo H, Ohguro N, Oono S, Enaida H, Okinami S, Mizuki N.
-
Journal Title
Ophthalmic Genet.
Volume: 38
Pages: 187-189
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-