2018 Fiscal Year Research-status Report
結膜線維芽細胞における慢性炎症型の表現型獲得に必要なエピジェネティクス機構の解明
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17K11500
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Research Institution | Nihon Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岡田 直子 日本薬科大学, 薬学部, 助教 (50636165)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アレルギー性結膜炎 / 線維芽細胞 / エピジェネティクス / ペリオスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、申請書項目1に関し、昨年に引き続き重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で高発現する遺伝子群の中から、特にエピジェネティクス変換に重要な候補因子の探索を行った。昨年度の成果として、重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞におけるペリオスチン遺伝子の高発現と関連性の高い遺伝子として抽出、予測された686個の候補因子について、エピジェネティクス変換のために重要な分子として同定されたTGF-βやIL-1の下流分子として働く分子を抽出した。公共のマイクロアレイデータ(GEO;Gene Expression Omnibus)を活用し、TGF-βやIL-1の下流分子として動く可能性のある遺伝子と、これまでの候補因子との共通性を確認し、遺伝子を絞り込んだ。その結果、重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で高発現し、かつTGF-βとIL-1いずれにおいても誘導される16遺伝子を抽出した。この中には、数種の興味深いサイトカインや受容体などが含まれていたが、エピジェネティクスを直接的に制御可能な遺伝子を見出すことはできなかった。 そこで、重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で高発現し、かつペリオスチン遺伝子発現と高相関する遺伝子中より、エピジェネティクスを直接的に制御可能な遺伝子についてバイオインフォマティクスを駆使して探索したところ、3つの遺伝子が新たに発見された。さらに重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で低発現となる遺伝子より、同様に2つの遺伝子が発見された。今後は、これら5つの遺伝子を新たな候補因子として、ペリオスチン遺伝子の高発現のメカニズムに寄与しているかどうかの検証実験やエピジェネティクス誘導の機能解析などを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の目的通り、重症アレルギー性角結膜炎患者由来の結膜線維芽細胞におけるエピジェネティック誘導系の変換に重要な候補遺伝子の絞り込みについて、目標の成果を得ることができた。一方、これらの候補因子の絞り込みに関し、当初の仮説として考えていたIL1, TGF-βの下流分子の中からエピジェネティクスを直接的に誘導可能な因子を同定することが難しく、予想以上に時間を要してしまった。そこで今回は仮説を一部修正し、再度重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で大きく発現制御(高発現、低発現)される遺伝子群の中から、エピジェネティクスを直接的に誘導可能な因子を抽出し、有望な候補因子を発見するに至った。 上記の理由より、ペリオスチン発現をエピジェネティックに誘導できるかどうかの検証試験ついては、当初の研究計画よりも遅れている。このため次年度は、当初の計画を変更し、今年度の成果として得られた5つの候補因子について、エピジェネティクスを介したペリオスチン遺伝子の発現誘導に関与するかどうかを迅速に検証するため、細胞内におけるmRNA発現、タンパク質発現の検討、薬剤感受性(ステロイドを予定)などの発現検証実験と並行して、siRNAなどの発現抑制系を用いた機能解析を進める予定である。 一方、重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で高発現し、かつIL1, TGF-βの下流分子として共通性が見出された16遺伝子については、エピジェネティクス誘導との直接的な因果関係が現時点で見出すことができなかったため、今回は候補因子からは除外した。しかし、結膜の線維化や細胞活性化等において興味深いサイトカインや受容体などが含まれており、これらは今後、新たな検討課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に得られた結果を基にして、これまでに抽出されたペリオスチン遺伝子のエピジェネティクス制御について、5つの候補因子の細胞内における発現検証実験と、各候補因子の機能解析を並行して行う。具体的には、まず、これらの候補因子の細胞内における定常状態における発現レベル、およびIL1, TGF-βによる発現制御を確認するため、ELISAやウェスタンブロッティング法によるタンパク質発現の検討、薬剤感受性(ステロイド、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤などを予定)を検討する。同時に、申請書項目3に基づき、5つの候補因子についてsiRNAを設計する。Lipofection法により重症アレルギー性眼疾患患者由来結膜線維芽細胞への導入を行い、ペリオスチンの発現誘導への影響をqPCR、ELISAで確認する。ここまでの解析において傾向が確認された因子については、ヒストン化学修飾状態やDNAメチル化などのエピジェネティクス状態の変化を観察する。さらに発現抑制系で成果があった分子については、申請書項目2に基づき、Lipofection法またはレンチウィルスベクターを用いた遺伝子の強制発現系を構築し、実際にエピジェネティック変換を伴うペリオスチンの発現誘導を起こすことができるかどうか、qPCR、 ELISAで確認する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していたいくつかの抗体および汎用試薬について、実験系における使用量の節減が効率よくできたため、購入の必要がなくなった。これらは、次年度に予定しているsiRNA関連試薬の購入費用の補てん分としたい。
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