2018 Fiscal Year Research-status Report
創傷治癒過程における免疫系細胞の役割についての包括的研究:「創傷免疫学」の確立
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17K11548
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
菅 浩隆 杏林大学, 医学部, 講師 (60633972)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単球・マクロファージ系細胞 / 創傷治癒 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの成果で,単球・マクロファージ系細胞が線維芽細胞による線維化を抑制すること,その抑制作用にはinterleukin-6 (IL-6)が関与していることが示唆されていた。そこで,線維芽細胞に直接IL-6を添加する実験を行った。その結果,IL-6が濃度依存的に線維芽細胞における1型コラーゲンや3型コラーゲン、alpha smooth muscle actin (aSMA)、connective tissue growth factor (CTGF)の発現を抑制する一方、matrix metalloproteinase-1 (MMP-1)の発現を亢進することが確認された。これは単球・マクロファージ系細胞と線維芽細胞との共培養で認められた現象と同様であり,単球・マクロファージ系細胞がIL-6の分泌を介して線維芽細胞による線維化を抑制しているという機序を支持するものである。 さらに,実際の創傷治癒過程における免疫系細胞の関与を調べるため,倫理委員会の承認を得た後,手術時に廃棄される創部肉芽組織をフローサイトメトリーで解析する実験を行った。その結果,肉芽組織中の免疫系細胞の中で単球・マクロファージ系細胞(CD11b陽性,CD14陽性)の占める割合が末梢血と比較して高いこと,また,末梢血中には見られないCD206陽性マクロファージが多く存在していることが確認できた。創傷治癒過程におけるCD206陽性マクロファージの重要性を示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単球・マクロファージ系細胞がIL-6の分泌を介して線維芽細胞による線維化を抑制しているという機序を詳細に解明することができている。また,実際の創傷部位における単球・マクロファージ系細胞の存在をフローサイトメトリーで確認できた意義も大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
創傷部位に存在し,末梢血中には存在しないCD206陽性マクロファージに注目し,創傷治癒に関連した機能(サイトカイン分泌や遊走能など)についてより詳細な解析を行う予定である。さらに、他の免疫系細胞についても、線維芽細胞や表皮角化細胞との共培養実験を行い、その相互作用を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
順調に実験が進み、予定より物品の購入が少なく済んだため。また、予定していた旅費の支出がなかったため。今後は、さらに実験を進めていく上で必要な物品の購入や、学会発表、論文投稿の費用に充てる予定である。
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