2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K11566
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
櫻田 宏一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10334228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 名実子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (10782386)
宇都野 創 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (60367521)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性中毒学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究課題初年度として、主に予備実験を中心とした実験系の確立を行った。はじめに麻酔薬として以前用いていたエーテルおよびペントバルビタールから、三種混合麻酔薬に変更したことから、ラットを用いたサリン類似体INMP暴露後の有機リン系中毒症状およびPAM類似体投与後の解毒作用に対する三種混合麻酔薬の影響等について、詳細な確認を行った。特に麻酔量、麻酔深度レベルや麻酔持続時間とINMP投与後の急性有機リン系中毒症状への影響など、詳細な観察を行い、適正な麻酔条件を設定した。次に、麻酔下でのPAM類似体および硫酸アトロピン投与のための2つの静脈ライン確保のために器具類、輸液装置、投与速度等の条件設定を行った。昨年度まで実施していた他機関の動物実験施設を用いた実験から、本学の動物実験施設での実験に変更したことから、一連の実験系における各種使用機材や使用方法が変わり、それに対応する新たな実験系を確立する必要があった。また、本実験での本格的なデータ採取のために用いる活性低下のないピュアなサリン類似体INMPを準備するために、連携研究者のサポートの下、その有機合成を行った。合成したサリン類似体INMPをラットに静脈投与したところ、十分に継続した有機リン系中毒症状を呈し、その効果を確認することができた。同時に安楽死後、血液および脳を採取し、INMP暴露時の血液および脳内AChE活性測定試料を準備することができた。一方、活性測定のための分析機器においても、新規施設での実験であることから、従来と異なる分析装置を用いることとなり、各種分析条件の設定や適正な吸光度での測定のための効果的なフィルター導入などを図り、本格的なデータ採取のための準備を整えることができた。この設定条件の下、一連の実験系を用いた新規PAM類似体の脳内活性測定系を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題に関連する実験はこれまで他施設の実験室で行ってきたが、本年度より新規施設の動物実験室で実施することになったことから、用いる機器や器具等を含めた実験系の見直しが必要となった。そのために、一連の実験系の立て直しおよび改良を行い、そのために時間を費やすこととなった。また、従来から用いてきた麻酔薬が現在は推奨されていないことから、これに替わる三種混合麻酔薬を用いた系とするために、本実験系における適正量、麻酔時間等の詳細を明らかにする必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した実験系により、まずは新規PAM類似体である4-PAOの効果について確認する。投与濃度および投与時間による影響、アトロピン併用の有無による解毒効果の違い、視覚的な有機リン系中毒症状の推移を観察する。採取した各種条件下での血液および脳内のAChE活性を明らかにし、同時に血液中のINMPおよび4-PAO濃度の変化等についても確認する。現在、臨床に用いられている2-PAMは脳内の解毒作用に効果がないとされていることから、同様の各種実験を行い、4-PAOを用いた場合の活性の変化について比較し検討し、より効果的な投与条件を明らかにしていく。さらに、VX暴露を想定したVX類似体ENMPに対する新規PAM類似体の解毒効果についても重要な検討事項であり、今後検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、予備的検討が主となり、予定動物数を用いた本格的なデータ採取に至らなかったことにより、当該助成金が生じた。次年度は確立した実験条件の下、新規解毒剤として期待される4-PAOについて積極的にデータを採取する。すなわち、ラットを用いて、サリン類似体INMPの投与で低下させた脳内AChEに対して各種濃度での4-PAO静脈連続投与を行い、活性変化を測定する。比較のため、現在臨床に用いられている2-PAMの効果についても同様の活性変化の測定を試みる。
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