2019 Fiscal Year Research-status Report
敗血症性DICにおけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の役割
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17K11567
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
相星 淳一 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50256913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 哲幸 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50178323)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2 / 血小板 / 敗血症 / 播種性血管内凝固症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスホリパーゼA2(PLA2)は、細胞質性PLA2(cPLA2)、分泌性PLA2(sPLA2)、カルシウム非依存性PLA2(iPLA2)の三つに大きく分類される。血小板の細胞質内にはcPLA2、iPLA2γ、iPLA2βの酵素が存在する。コラーゲン、トロンビン、ADPなどの刺激物質に対してPLA2は活性化し、その結果、産生されたアラキドン酸やその代謝産物であるエイコサノイドが血小板機能の発現において重要な役割を演じるが、細胞内シグナル伝達や播種性血管内凝固症候群の病態におけるiPLA2 の役割は十分に解明されていない。したがって、本研究の目的は、ヒト血小板の活性化(凝集能、細胞内カルシウム上昇、接着分子発現、脱顆粒、アラキドン酸・エイコサノイド産生)におけるiPLA2 の酵素学的機能について、各種PLA2 に対する特異的阻害剤(pyrrophenone、R-BEL、S-BEL)を使用して検討する。 2019年度のおもな実績としては、トロンビン刺激による血小板凝集反応において、コラーゲン刺激による反応と異なり、iPLA2、特にiPLA2βの関与が示唆された。また、thromboelastographyにおける内因系凝固活性による血液凝固反応においても同様の結果を確認した。血小板凝集反応と同様に、トロンビン刺激によるセロトニンの遊離においても、iPLA2が強く関連していた。また、コラーゲン刺激では、cPLA2とiPLA2が部分的に関与していた。一方、エイコサノイドの一種であるトロンボキサンB2産生においては、cPLA2が中心的に作用していた。このように、代表的な2種類の細胞内PLA2であるcPLA2とiPLA2の血小板機能への関与は、活性化物質の種類に大きく依存していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血小板凝集反応におけるcPLA2、iPLA2γ、iPLA2βの役割を明らかにするため、それぞれに対する特異的阻害剤(pyrrophenone、R-BEL、S-BEL)を使用して阻害実験を行った。コラーゲン刺激に対する血小板凝集はすべての阻害剤で濃度依存的に抑制されたが、トロンビン刺激による血小板凝集反応では、cPLA2阻害剤では抑制されず、iPLA2阻害剤が濃度依存的に阻害した。また、カオリン刺激による内因系凝固活性を測定するthromboelastographyの実験では、cPLA2やiPLA2γに対する阻害剤ではなく、iPLA2β阻害剤が有意に血液凝固を抑制した。 コラーゲン、トロンビンによる血小板のエイコサノイド産生の検討では、cPLA2阻害剤はコラーゲンやトロンビン刺激によるトロンボキサンB2の産生を完全に抑制し、iPLA2阻害剤はトロンビンによる産生を部分的に抑制した。 セロトニンの遊離作用におけるcPLA2とiPLA2の役割を検討した。iPLA2阻害剤はコラーゲンあるいはトロンビン刺激による遊離作用を部分的に抑制したが、cPLA2阻害剤はコラーゲン刺激による遊離のみを部分的に抑制した。以上より、cPLA2とiPLA2の血小板機能への関与は活性化物質の種類に大きく依存することが明らかになった。 本研究は、DICの病態に極めて重要な生理活性物質であるトロンビンが、iPLA2酵素の活性化に深く関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、血小板細胞質内のcPLA2、iPLA2γ、iPLA2βが代表的な細胞内シグナル伝達物質である細胞内カルシウムにどのように関与しているか検証するため、コラーゲンあるいはトロンビン刺激による細胞内カルシウム上昇に対するpyrrophenone、R-BEL、S-BEL阻害剤の抑制効果を比較検討する。また、接着分子発現についてもflow cytometryを用いて検証する予定である。 上記の研究と並行して、ラット敗血症モデルの作製を継続する。
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Research Products
(1 results)