2018 Fiscal Year Research-status Report
低ナトリウム血症による心筋障害の機序解明と新規心不全治療戦略の構築
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17K11578
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
手嶋 泰之 大分大学, 医学部, 講師 (10457608)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 低ナトリウム / 心筋虚血再灌流障害 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全においては低ナトリウム血症が惹起されやすいことが知られており、予後への影響も指摘されている。また低ナトリウム血症は酸化ストレスを増加させることが報告されている。本研究では低ナトリウム濃度への曝露による心筋細胞内の活性酸素種(ROS)量の変化と心筋虚血耐性への影響について検討する。 培養心筋細胞を用いた実験では、新生仔ラットを初代培養し、正常ナトリウム濃度群(140mEq/L)と110,120,130mEq/Lの各低ナトリウム濃度群に割り付けし、それぞれ24時間もしくは72時間曝露した。低ナトリウム濃度に72時間曝露した心筋細胞では正常ナトリウム濃度群に比べROS量が有意に増加した。各低ナトリウム濃度曝露により細胞内カルシウム濃度が上昇し、CaMKIIの活性化を認めた。形態学的評価では、24時間低ナトリウム濃度に曝露した細胞ではミトコンドリアが膨化し、クリステの破壊像が認められた。また酸化ストレス刺激に対しより脆弱であった。以上の結果より、低ナトリウム濃度への曝露により酸化ストレスに対する心筋細胞の脆弱性が亢進した。その機序として細胞内カルシウム濃度の上昇とCaMKIIの活性化を介したROS量の増加が関与することが示唆された。この結果を生体において確認するため、動物モデル作製を行った。成獣ラットに低ナトリウム食とフロセミド(100mg/kg)を4週間経口投与し低ナトリウム血症を誘導した。ランゲンドルフ心臓灌流装置を用いて心臓を低酸素に暴露した結果、低ナトリウム血症モデルでは左室内圧の回復が減弱しており、心筋梗塞領域の拡大を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで培養細胞を用いた実験を主に行い、低ナトリウム曝露による活性酸素種の増加、カルシウム過負荷を認めた。さらに細胞の脆弱性が亢進するデータも得られた。現在、低ナトリウム血症動物モデルを作製し心筋への直接の影響、虚血再灌流への脆弱性、メカニズム解析に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた実験結果をもとに、低ナトリウム動物モデルを作製し、虚血再灌流障害への脆弱性について検討している。さらにメカニズムとして培養心筋細胞と同様に活性酸素種の増加、カルシウム過負荷が関与するか検証する。
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Causes of Carryover |
現在までモデル動物作製のための薬剤、動物購入数が予定よりも少ないが、次年度に購入数は予定数に達する予定である。また試薬類購入についてはメーカーの割引キャンペーンを利用したため予定価格より低く抑えているが、差額分は次年度に試薬類の新規購入に充てたい。
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Research Products
(3 results)