2017 Fiscal Year Research-status Report
ARDSに伴う肺胞上皮細胞死はアポトーシスなのか,ネクローシスなのか?
Project/Area Number |
17K11582
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
内本 一宏 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (50710951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水原 敬洋 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (00637712)
東條 健太郎 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80737552)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞死 / 臓器不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者において肺胞上皮細胞死がネクローシス優位なのか,アポトーシス優位に生じているのか血液中の上皮細胞の全細胞死マーカーCK18 M65及びアポトーシス特異的マーカーCK18 M30を測定することで明らかにすることを目標としていた. 本年度はまず,実際の患者での測定の前に動物モデルにおいてCK18 M65の挙動を検討することとした.動物モデルとしてLPS気管内投与による肺傷害モデル(その他の臓器障害はほとんど生じない)及びLPS腹腔内投与による敗血症モデル(肝障害,腎障害が生じるが肺傷害は生じない)の2種類のモデルマウスを作成した.LPS気管内投与モデルにおいて血中のCK18 M65は増加しており,気管支肺胞洗浄液(BALF)中のCK18 M65と相関関係がみられたことから,肺傷害が単独で生じている病態においては肺胞上皮細胞由来のCK18 M65が血中に移行しており,肺胞上皮細胞死の血中マーカーして用いることが出来ると考えられた.しかしながら,LPS腹腔内投与モデルにおいても血中のCK18 M65が大きく増加しており,肺傷害とその他の臓器障害が同時に生じているような病態においては血中CK18 M65は肺胞上皮特異的な細胞死マーカーとはならないことが明らかになった.BALF中のCK18 M65,M30であれば肺胞上皮細胞特異的な細胞死マーカーとなると考えられたが,ARDS患者のBALFの採取は危険性が大きく,困難であり,臓器不全患者での血中CK18 M65,M30を測定することで,肺胞に限らない上皮系の細胞のネクローシス,アポトーシスの臓器不全への寄与について明らかにする計画に変更することとした. 現在,横浜市立大学市民総合医療センター集中治療部の入室患者の重症度などの予備解析と行いつつ,倫理審査にむけてプロトコルを作成している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実際の患者を対象とした研究の前に動物モデルを用いた予備検討を行った所,当初の計画では目標が達成できないことが明らかになり,計画の大幅な変更が必要となったため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を踏まえ,横浜市立大学市民総合医療センター集中治療室において,集中治療室入室後に臓器不全となった患者とならなかった患者における血中の上皮細胞死マーカーCK18 M65,M30の挙動に違いがみられるのか明らかにし,上皮細胞死が臓器不全の治療ターゲットになりうるのか検討するというデザインの臨床観察研究のプロトコルを作成している. プロトコルが倫理委員会にて承認された後に,研究を開始する予定である.
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Causes of Carryover |
本年度はまず,実際の患者での測定の前に,LPS気管内投与による肺傷害モデル及びLPS腹腔内投与による敗血症モデルの2種類のモデルマウスを作成し,CK18 M65の挙動を検討した. 当初の予想と反して,肺傷害とその他の臓器障害が同時に生じているような病態においては血中CK18 M65は肺胞上皮特異的な細胞死マーカーとはならないことが明らかになった. ここまでの解析に本年度の大半を要したことに加えて,肺胞に限らない上皮系の細胞のネクローシス,アポトーシスの臓器不全への寄与について明らかにする計画に変更が必要になり,当初予定よりも研究経過が遅れているため,次年度使用額が生じた.
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