2017 Fiscal Year Research-status Report
急性アルコール中毒時のNETs形成に及ぼす影響-敗血症増悪機構の解明-
Project/Area Number |
17K11585
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
粕田 承吾 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70434941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性アルコール中毒 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性アルコール中毒時のneutrophil extracellular traps (NETs)形成に及ぼす影響について検討している。NETsは好中球から放出されるDNAやヒストンを主体とする網状構造体で、2004年に発見された新たな細菌排除機構である。NETsの放出には、ヒストンのシトルリン化が必須とされている。一般にNETsは生体に有益に働くと考えられていたが、最近の研究では、NETsの主成分であるヒストンが血管内皮細胞傷害性を持つことから、NETsは生体にとって諸刃の剣であり、むしろ敗血症の増悪因子としての側面が注目されている。我々は、アルコールはNETs形成を促進することによって敗血症を増悪しているとの仮説を立て、これを検証している。 in vitroの実験において、アルコールはPMA刺激によるNETs形成を促進することを明らかにしつつある。具体的には、① PMAで刺激した好中球の培養上清中のcell-free DNA (cfDNA)濃度はアルコール添加によって増大した。(Sytox green assay) ② 好中球からのneutrophil elastaseおよびシトルリン化ヒストンの放出が促進されることを確認した(免疫染色) また、急性アルコール中毒下のマウスにcecal ligation and puncture (CLP)法によって腹膜炎性敗血症モデルを作製し、血漿中のcfDNA濃度を測定したところ(picoGreen assay)、コントロールマウスと比較して有意に血中cfDNA濃度が上昇することを確認した。さらに、Western blot法によって、シトルリン化ヒストンが急性アルコール中毒時に増加していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の仮説通り、アルコールがNETs形成を促進するというデータが着々と得られている。特にin vitroならびにin vivo の双方の実験において同様の結果が得られたことは、この仮説を強く裏付けている。当初は、免疫染色によるヒストンやneutrophil elastaseの観察がなかなか成功しなかったが、現在では至適条件も定まり、安定して結果を出せている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、in vitroの実験では、アルコールの濃度を50 mMと設定している。今後は、アルコール濃度を変化させて実験を行い、NETs形成はアルコール濃度に左右されるのかを検討する要諦である。 また今後は、in vivoの実験に一層の力を注ぎたい。CLPモデルを用いて、急性アルコール中毒の敗血症における影響を詳細に検討する予定である。 具体的には、マウスの血中のサイトカイン濃度の測定、DICマーカーの測定、腹腔内洗浄液や肝臓ホモジネートの細菌播種の程度の検討などである。また、敗血症マウスから好中球を単離し、これを用いたex vivoでのNETs形成も観察したい。
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Research Products
(1 results)