2018 Fiscal Year Research-status Report
急性アルコール中毒時のNETs形成に及ぼす影響-敗血症増悪機構の解明-
Project/Area Number |
17K11585
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
粕田 承吾 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70434941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性アルコール中毒 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き, エタノールがneutrophil extracellulara traps (NETs)の産生・放出に与える影響を検討している. 前年度は, エタノールがNETsの産生を促進することを明らかにしたが, 今年度は, アルコール濃度の影響について検討した. NETsは核内DNAを主成分とする網目構造物である. NETsの産生および放出には, 細胞内のReactive Oxigen Species (ROS)の産生増大およびヒストンのシトルリン化が必須であると考えられている. in vitro の実験において, 好中球をphorbol-12-myristate-13-acetate (PMA; 10 nM)で刺激し, NETsの放出を培養上清中の cell-free DNA (cfDNA)をSytox Green assay によって測定した. さらに各種濃度のエタノール(0, 25, 50, 100 mM)を添加した場合, cfDNAはPMA単独刺激時と比較して, 増大する傾向を示したが, その効果は50 mMのエタノールでもっとも顕著であった. 一方で,細胞内ROSの産生をROS測定キットで測定したところ, PMAによるROS産生はエタノール濃度依存性に増強された. また, これらの好中球からmRNAを抽出し, ROS産生に必要な酵素NADPH oxydase 2 (NOX2; CYBB)ならびにヒストンのシトルリン化に必要な酵素(PAD4)の2種類のmRNAの発現をリアルタイムPCRで測定したところ, 驚くべきことにCYBB, PAD4ともにPMAの添加により低下することがわかった.また, アルコールはこれらの発現にほとんど影響を及ぼさなかった. PMAによりCYBBおよびPAD4のmRNAの発現が低下することはこれまでに知られていない新知見であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続き, エタノールがNETs形成を促進しているという仮説に合致するさらに強力なデータが得られた (ROS). cfDNAがエタノール濃度50 mMでピークに達するのに対し, ROSはエタノール濃度依存性に増大していき, ここに解離があることがわかった. 予想外のことではあるが, 今後の解明課題として, 興味深い. また, NETs産生のもっとも強力な刺激物質であるPMAがCYBBおよびPAD4のmRNA発現を抑制していることが明らかとなった. とても以外ではあるが, ある種のnegative feedback機構が関与している可能性がある. これら今までに知られていなかった知見が得られており, 機構の解明はこれからの課題となるが, おおむね順調にデータは得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
上記のin vitroのデータにおける解離を説明するための実験を行っていく予定である. また, in vivo の実験に力を入れる. 急性アルコール中毒マウス(32%アルコール6 g/kgを経口投与)を用いて, 敗血症モデルを作製する予定である. 敗血症モデルには, 世界標準であるcecal ligation and puncture (CLP)法を用いる. 前年度までに, 飲酒マウスは血中のcfDNAおよびシトルリン化ヒストンH3(NETsの形成に必須)が増大することを明らかにしている. 今年度は, アルコール投与によるNETs放出の増大が、敗血症病態にいかなる影響を与えるかを検討していく. 具体的には, 炎症性サイトカイン, 血管内皮細胞傷害マーカー(VWFなど)、DICマーカーの測定である. また, 全身への細菌播種も検討する予定としている. CLP後に血液, 腹腔内洗浄液, 各臓器などを採取し, その希釈液を培地に撒き, colony forming unit (CFU)を計測する.
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Causes of Carryover |
おおむね計画通りに使用したため, 残額は僅少である. 購入した試薬が当初予想よりも使用量が少なく済み, 試薬の購入量が少なくなったことが残額が生じた理由であると思われる. 今後は, サイトカインや各種のマーカーを測定することを計画しているため, 多くの測定キットが必要になると思われる. その購入費に残額は充当する予定である.
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Research Products
(1 results)