敗血症における好中球高齢化とその病態解明に関する研究

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K11593
• Research Institution: Juntendo University
• Principal Investigator: 平野 洋平 順天堂大学, 医学部, 助教 (70621895)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 岡本 健 順天堂大学, 医学部, 教授 (40347076) ; 田中 裕 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252676)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 敗血症 / 好中球 / 加齢 / 遊走 / SOFAスコア

Outline of Annual Research Achievements

昨年我々はマウスと同様にヒト好中球においても時間経過、すなわち高齢化でCXCR4が増加することを示し、高齢好中球マーカ－としてのCXCR4の有用性を示した。さらに我々は、昨年と継続して健常者と敗血症患者（受診72時間以内）から血液サンプ ルを採取し、同様に好中球を分離後、蛍光標識抗体（CXCR4）を用いて高齢好中球の全血液中に対する割合をフローサイトメトリー法を用いて測定した。結果として、健常者と比較して敗血症患者においては有意に血中CXCR4発現陽性好中球（高齢好中球）の割合さらにはCXCR4発現陽性好中球表面の発現量が増加していることを突きとめた。さらに、昨年と継続して敗血症患者の高齢好中球陽性の割 合と重症度スコア（SOFAスコア）や種々の臓器障害マーカーや臨床パラメーターとの相関関係を解析すると、高齢好中球の割合は重症度スコア と有意に逆相関を示し、また腎機能（クレアチニン）とも有意に逆相関関係を示していた。

興味深いことに、敗血症群と敗血症ショック群で比較すると、高齢好中球における表面CXCR4発現量は敗血症ショック群で増加する一方、その血中での陽性割合は低下していた。
我々は、この結果の解釈として、高齢好中球は他の好中球phenotypeと比較して、炎症組織への血管外遊走能に優れているpenotypeであり、そのため敗血症が重症化するほど循環血中からいなくなってしまい、血中での割合は減少するのではないかと考えている。
今後は、これら仮説の証明のため、継続して高齢好中球の血管外遊走能の評価を主体として研究を行っていく方針である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の当該年度の研究の達成目標である高齢好中球と敗血症における炎症、臓器障害や重症度との関連を明らかにする研究に関して予定通り施行ができており、前述のように高齢好中球の割合は重症度スコアと有意に逆相関を示し、また腎機能（クレアチニン）とも有意に逆相関関係を示していることを証明している。
そのため、我々は研究の進歩状況はおおむね順調に進展していると評価している

Strategy for Future Research Activity

これまでに達成してきた研究結果から、高齢好中球はその他好中球phenotypeと比較して、血管外遊走能が優れた好中球phenotypeである可能性がある。今後は好中球遊走に関わる様々な機序やステップ（好中球変形能、接着、遊走、血管外漏出など）が高齢好中球において亢進しているのかどうかを評価する実験系を検討している。さらには、当初の目標である高齢好中球の敗血症患者血中での継時的変化を明らかにする研究や好中球の加齢に関わるタンパク質の探索 を行う研究を開始していく方策である。

Causes of Carryover

研究計画は概ね順調に進行しているが、実際に算定した研究サンプルサイズはまだ達成しておらず、そのため実験に使用する医療試薬の購入などが予定より少額で次年度使用額が生じたと考えられる。しかし、予定していなかった高齢好中球遊走能亢進を評価する実験系を計画中であり、これらの費用として次年度使用額を考えている。