2018 Fiscal Year Research-status Report
神経ペプチドPACAPによる神経障害に対する細胞死抑制・軸索伸張の分子制御機構
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17K11597
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
平林 敬浩 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 寄附講座等助教 (40297015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PACAP / ノックアウトマウス / CRMP2 / 軸索伸長 / 神経細胞死 / 脊髄損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、脳虚血・脳梗塞モデル、脊髄損傷モデルといった神経障害モデル動物を用いた研究結果から、PACAPはその受容体分子に結合し、遅発性神経細胞死抑制作用や損傷した神経に対し軸索伸長作用を持ちその機能を回復することが明らかになっている。本研究では各種遺伝子ノックアウトマウス、阻害剤等を用い、PACAPの神経細胞死抑制作用、軸索伸長作用における分子機構の解明を目的とする研究を行う。 当該年度は神経分化モデルとして広く使われるラット副腎褐色細胞腫細胞PC12細胞に種々な濃度のPACAPを添加し、軸索伸長時の分子機構の解析を行った。PACAP受容体にはPAC1受容体(-R)、 VPAC1-R 、そしてVPAC2-Rの3つの受容体が存在するが、まず、PACAP添加による軸索伸長にこれらのどの受容体が関与するかを各受容体遺伝子の発現および阻害剤を用いた実験で検討した。その結果、PACAPによるPC12細胞の軸索伸長にはPAC1-Rが関与することが明らかになった。また、これまでの結果から脊髄損傷モデルマウスにPACAP処置をした際に軸索伸長因子であるCRMP2遺伝子の発現上昇が損傷部位で認められたことから神経傷害時におけるPACAPの神経細胞死抑制作用、軸索伸長作用においてCRMP2が関与している可能性を強く示唆されている。そこで、PC12細胞においてPACAP添加により、CRMP2およびその関連タンパク質の変化を調べたところ、リン酸化CRMP2が減少し、そのリン酸化酵素であるGSK3βの不活性化が認められた。 以上の結果から、PACAPのによるPC12細胞の軸索伸長には、PAC1-Rおよび、GSK3βの不活性化とそれに伴うリン酸化CRMP2の減少が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、PACAP受容体であるPAC1-R, VPAC1-R, VPAC2-R遺伝子についてそれぞれノックアウトマウスの作製を行い、これらを用いて神経傷害モデルに対してPACAPが野生型マウスを用いた神経傷害モデルと比較して神経細胞死抑制・軸索伸長作用の効果に変化があるかを解析する計画であった。しかし、PAC1-R 遺伝子ノックアウトマウスは作製できたが、VPAC1-R, VPAC2-R遺伝子ノックアウトマウスについては遅延しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したPAC1-R遺伝子ノックアウトマウスを用い脊髄損傷モデル、脳虚血モデルを作製する。これら神経傷害モデルに対してPACAPが野生型マウスを用いた神経傷害モデルと比較して神経細胞死抑制・軸索伸長作用の効果に変化があるかを解析し、動物個体レベルでPACAPの神経細胞死抑制作用、軸索伸長作用を解析する。また、PAC1-R遺伝子ノックアウトマウス脳から初代神経細胞を単離培養し、PACAPによる軸索伸長作用を野生型マウス由来神経細胞に対する作用と比較し、詳細な分子機構の解明を行う。さらに、またDNAアレイを行う実験系が立ち上がったので、これを用いより詳細なPACAPによる神経細胞死抑制あるいは神経再生・新生の実態を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた、実験動物の購入費が少なく済んだため。これらは次年度の遺伝子ノックアウトマウス作製・維持の費用に充てる。
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