2017 Fiscal Year Research-status Report
侵襲時の生体防御不全対策:PPARを分子標的とした自然免疫応答の制御
Project/Area Number |
17K11602
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
宮崎 裕美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター, 助教 (30531636)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 大蔵 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター, 教授 (90531632)
小野 聡 東京医科大学, 医学部, 教授 (30531355)
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (70531391)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 貪食活性 / マクロファージ / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症熱傷患者は、皮膚の喪失のみならず全身の免疫機能が著しく損なわれ易感染の状態となる。医療技術が進歩した近年においても、時間の経過とともに感染の合併率は上がり、重症敗血症から致死的な多臓器不全へと移行しやすく、感染症が原因で死に至る患者が減少しない。糖尿病治療薬として臨床で使用されているピオグリタゾン(PGZ)は核内受容体PPARγの選択的リガンドであり、長期投与によって血糖を低下させるとともに、生体防御の砦として重要なマクロファージに作用し抗炎症性応答を誘導することが知られている。 今年度は、PPARγを介した自然免疫応答の制御が重症熱傷後の細菌感染による敗血症対策となり得るかマウスを用いた基礎的研究によって検証した。マウス重症熱傷モデルにPGZを投与し、受傷後の細菌感染による予後、炎症応答、マクロファージ貪食活性について未治療群と比較検討した。その結果、PGZは熱傷後の細菌感染による予後を改善することが明らかとなった。PGZによる予後改善効果について詳細に検討したところ、重症熱傷によりKupffer細胞の貪食・殺菌活性は著しく低下し、菌クリアランスが減弱化していたが、PGZ投与により貪食能、殺菌活性いずれも亢進し、菌クリアランスが改善した。また、PGZは肝臓により多くの好中球や炎症性単球を遊走させたが、臓器障害を発症することなく早期の菌排除に貢献し、過剰な炎症応答は回避されていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱傷後の細菌感染による生存率及びマクロファージ機能に関する検討は当初の計画通りに実施できた。ピオグリタゾン投与によるPPARγ活性化が、侵襲時の易感染病態における細菌感染に対し予後を改善していることを明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
肝臓に遊走されている炎症性単球や好中球の機能解析を進める。さらに、肝臓や肺などの単核球に発現するPPARγを欠損させたモデルマウスの確立と機能解析実験に移行する。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたsiRNAによるPPARγ欠損モデルの構築に関する実験を実施しなかったため、次年度使用額が生じた。 30年度の研究計画に欠損モデルの作成も予定し、研究遂行において必要な試薬類・理化学消耗品の購入に研究費を用いる。また、研究成果発表のための学会参加費用としての旅費、英文専門誌に投稿するための英文校正費及び投稿費用としても研究費を用いる。
|