2017 Fiscal Year Research-status Report
Molecular and pathological understanding of oral early cancer using mouse chemical carcinogenesis model
Project/Area Number |
17K11609
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (80444579)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊澤 悟 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (30243249)
大家 香織 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (00779126)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 口腔癌 / 早期癌 / 扁平上皮癌 / 化学発癌 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌は、その早期病変である口腔粘膜の上皮内病変を経て浸潤癌へと進展する。その上皮内病変の病態解明は、浸潤癌への進行過程を明らかにし、浸潤癌への進行を防ぐための重要な基礎的研究である。本研究ではマウス化学発癌モデルを用いて、浸潤癌が形成される前に生じる舌の上皮内病変を採取し、細胞生物学的・分子生物学的解析により早期病変の病態解明、浸潤癌への進展に関わる因子を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、発癌過程の舌上皮細胞を選択して採取することを目的に、上皮細胞特異的に緑色蛍光(ZsGreen)を発する遺伝子組換えマウスであるK14Cre;ZsGreenマウスの作製を行った。米国ジャクソン社より購入したK14CreマウスとZsGreenマウスを交配し、口腔粘膜上皮に永続的に緑色蛍光を有するK14Cre;ZsGreenマウスを作製した。実際に蛍光が発現されている事を確認したのち、化学発癌を開始している。 また遺伝子組換えマウスの作製期間を利用し、野生型マウスに対し化学発癌を行ったところ、これまでの報告と同様、超早期病変と思われる過形成、上皮内病変である舌上皮異形成および舌早期癌(非浸潤癌)、進行した浸潤癌組織を得た。浸潤癌の特徴のひとつである異常血管増生に着目し、それぞれの病変における毛細血管を解析したところ、病態の進行に伴い、血管密度が上昇している事が明らかとなった。これまで、他の研究者らにより異常上皮細胞の低酸素状態が血管密度の上昇につながっていると報告されている。そこで低酸素トレーサーおよび免疫組織学的解析にて早期病変における低酸素状態を解析したところ、低酸素状態は証明されなかった。この事は、これまで想定されてきた上皮細胞の因子ではなく、他の因子が血管増生に関わっている可能性が示唆する。今後、早期病変の組織より細胞を抽出、採取し、より詳細な解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、遺伝子組換えマウスであるK14Cre;ZsGreenマウスを作製を行い、平成30年度にK14Cre;ZsGreenマウスに対して化学発癌を開始する予定であったが、米国ジャクソン社からの購入が順調であったこと、また交配が効率よく行われたことから想定したより早く化学発癌を開始することが出来た。今後、持続的に化学発癌に供する遺伝子組み換えマウスの維持に努める必要がある。 また、遺伝子組み換えマウスの作製期間を利用して、研究開始と同時に、野生型マウスにおける化学発癌を開始したことで、これまでの報告と同様、超早期病変と思われる過形成、上皮内病変である舌上皮異形成および舌早期癌(非浸潤癌)、進行した浸潤癌の組織を得る事が出来た。それにより、研究期間の早期より、研究対象の一つとして血管新生・異常血管の増生に着目することが出来た、低酸素トレーサーの使用といった発癌中のマウスに薬剤を投与して解析するという実験にも着手することが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に開始したK14Cre;ZsGreen遺伝子組み換えマウスに対する化学発癌により得られた組織における上皮細胞に限局した緑色蛍光の発現を、超早期病変と思われる過形成、上皮内病変である舌上皮異形成および舌早期癌(非浸潤癌)、進行した浸潤癌にて確認する。なお、本研究で使用するK14Cre;ZsGreen遺伝子組み換えマウスはCre-LoxPシステムを利用しており目的細胞が既存の扁平上皮を由来としている限り緑色蛍光を発現していると考えられる。 病変における上皮細胞の発する緑色蛍光を確認した後、生体より組織を採取し、酵素的に舌粘膜を分解し、舌扁平上皮細胞の初代培養を行う。各病変より採取・培養された初代培養細胞よりタンパク質、mRNAを抽出し、血管増生因子の発現を比較・解析する。また網羅的遺伝子解析法を用いて、早期病変から浸潤癌に至る過程の網羅的な遺伝子発現プロファイルを作製する可能性についても検討する。なお、初代培養が困難であった場合は組織全体での解析を検討する。 早期病変から浸潤癌に至る過程での血管新生を明らかにする目的で、新生血管を追跡可能なVE-cadherin-CreERT2マウスを購入し、初代早期病変細胞と浸潤癌細胞の同所移植による血管新生能の比較を行う。同マウスにおける化学発癌と新生血管の追跡実験の可能性についても検討する。
|
Causes of Carryover |
平成29年度末に遺伝子組み換えマウスの維持交配に必要であったため、次年度使用額が生じた。平成30年度助成金に加え、引き続き使用する。
|