2018 Fiscal Year Research-status Report
骨細胞が産生・分泌する分子による脂肪組織・脂質代謝制御の分子機構
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17K11637
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 正人 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (30236757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 潔美 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (90399973)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スクレロスチン / 骨細胞 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,骨から脂肪組織へのシグナル分子としてのsclerostinが脂肪組織や肝臓などの脂質代謝系にどのような機構を介し影響を及ぼすのか,その詳細な分子機構を調べ,neuropeptide Yの脂質代謝に及ぼす効果と骨細胞が産生し分泌されるsclerostinの関係を明らかにする.また,骨組織と脂肪組織の異種組織間の恒常性維持のための機能的なクロストークに関して,骨細胞におけるsclerostinの産生調節と脂質代謝の相関について明らかにすることを目的としている.本研究により,個体レベルにおいてこれまで明らかではなかった骨と脂質代謝との関連性の解明を目指すものである.今年度は,脂質代謝の主要臓器である肝臓に着目する研究を行った.肝臓組織からmRNAを抽出し,acyl-CoA carboxylaseなどの脂肪酸合成系やHMG-CoA reductaseなどのコレステロール代謝酵素の酵素のmRNAをqRT-PCRを用いて測定したところ,発現量の変化が観察された.すなわち骨細胞の産生するsclerostinが脂肪組織の脂肪細胞のみならず,肝臓における脂肪酸合成やコレステロール代謝といった生体にとって重要な脂質代謝系に対しても影響を及ぼしえることが明らかとなった.また,SLRP (small leucine rich proteoglycan) class IIに分類されるオステオアドへリンの発現プラスミドを作成し,MLO-Y4細胞にトランスフェクトしオステオアドへリンを過剰発現させたところ,sclerostinの産生が亢進されるという結果が得られた.本年度得られた結果から,骨細胞において脂質代謝に影響を及ぼすsclerostinの産生がプロテオグリカンによって調節され,脂肪組織における脂質代謝に影響を及ぼしていることが示唆されるという新たな知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画に基づき研究を実施し,以下の研究成果を得たため. 肝臓組織からmRNAを抽出し,脂質代謝に関わるLPL(1ipoprotein 1ipase),FAT(fatty acid tansporter),acyl-CoA carboxylase ACS(acy1-CoA sypthetase),UCP(uncoup1ing protein) HMG-CoA reductaseなど脂肪酸の取り込み,輸送,合成やコレステロール代謝などに関与する分子の発現量を調べたところ,sclerostinによる変動が明らかとなった.このことは,骨細胞の産生するsclerostinが脂肪組織のみならず,肝臓における脂質代謝系に対しても影響を及ぼしえることを示しており,その意義は大きい.また,マイクロアレイを用いた解析からSLRP (small leucine rich proteoglycan) class IIサブファミリーに分類されるオステオアドへリンが調節因子の候補として挙がった.そこで,このオステオアドへリンを過剰産生させた培養細胞を作成したところsclerostin産生が増加することを見出した.すなわち脂質代謝に影響を及ぼすsclerostin産生がプロテオグリカンが調節因子となっているという新たな可能性が考えられた.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によってSLRPによってsclerostinの産生が調節されることが明らかになったので,脂肪細胞が産生するプロテオグリカンがアディポサイトカインのように脂肪組織からのシグナルとなっている可能性が考えられる.そこで,今後はMLO-Y4細胞などの培養系を用いqRT-PCRもしくはWestern Blotを用い,種々のプロテオグリカンの添加によってsclerostinの産生・発現量の変化がについて調べる.また,イメージング手法を用いてsclerostin産生細胞を可視化して,SLRPによるsclerostinの産生量を定量して評価する.これによってどのプロテオグリカンがsclerostinの産生を調節しているか明らかにする.骨組織による脂質代謝の新たな調節メカニズムを詳細に検討していく.
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Causes of Carryover |
試薬が安価で購入できたため
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