2019 Fiscal Year Research-status Report
シグナル分子PRIPによる破骨細胞分化制御機構の解明
Project/Area Number |
17K11645
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松田 美穂 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (40291520)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破骨細胞分化 / PRIP / 共存培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、野生型(WT)およびPRIPノックアウト(KO)由来骨髄細胞を用いた単独培養系により破骨細胞分化におけるPRIPの役割について成果が得られたが、以前の解析から単独培養に比べ骨髄由来細胞および骨芽前駆細胞(POB)の共存培養系ではWTに比べKO由来骨髄細胞において破骨細胞分化がより大きく低下するので、PRIPがM-CSFやRANKL以外のシグナル経路にも関わることが予想された。そこで、共存培養系におけるPRIP欠損が影響するシグナル経路を特定するために、共存培養下の破骨(前駆)細胞を選別し、それらについて網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイ)を行うこととした。共存培養における分化誘導により成熟破骨細胞が多数出来るのに6、7日かかることを確認し、分化誘導4~6日の過程で細胞を選別し回収することを試みた。POBの増殖が著しく、共存培養下では数日で圧倒的にPOBが多くなるため、そこから破骨(前駆)細胞の分離・回収は困難でありトランスウェルを用いた系など試行錯誤したが、最終的には増殖したPOBの特徴的な形態を利用しておおよそ分離することができた。POBを大部分除いた破骨(前駆)細胞からRNAを精製し、現在マイクロアレイを行なっている。また、POB由来で破骨細胞分化の抑制性制御因子であるSemaphorin 3Aについて、本研究ではKOにおいて単独培養に比べ共存培養でより破骨細胞分化能が低下していることから、共存培養におけるSemaphorin 3AによるKOでの抑制的制御の持続の可能性を考えた。その受容体の一つであるNeuropilin1の発現を見たところ、WTでは分化とともに減少する一方KOでは減少があまり見られなかった。このことから、KOにおける破骨細胞分化の抑制的制御にはこの経路が関わる可能性が示唆され、現在、阻害剤による破骨細胞分化の正常化などを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属学部の意向により、これまで学際的共同利用施設にあった当研究室を学部管轄の研究棟に移設することとなりその移動が行われ、その前後は実験が全くできなかった。また、研究代表者は、その移設の計画から遂行、新たな遺伝子組換え実験実施場所や動物実験室の申請手続きなどを含む事務処理等全てを企画・総括し教室員を束ねて実務も行っていたため、その関連業務の多忙が半年ほど続いた。さらに、移設による実験機器の故障や配電不足等もあり速やかな実験再開が困難であった。これらのことから研究遂行が遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現の解析により、WT、KO間で発現量に差のある遺伝子を見出しリアルタイムPCRで発現の有意差を確認し、その中で破骨細胞分化に重要と思われる分子を絞り込む。その分子が関わるシグナル経路について、WTおよびKO骨髄細胞を用いて阻害剤や活性化剤による応答やPRIPおよびターゲットの遺伝子導入による効果の検討、さらに免疫沈降等による結合分子の生化学的解析を行い、PRIPがその経路のどこに作用するのかあるいは特定分子との相互作用を見出し、破骨細胞分化におけるPRIPの役割について包括的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
所属学部の意向により、これまで学際的共同利用施設にあった所属研究室を学部管轄の研究棟に移設することとなりその移動が行われたため、その前後は実験ができなかった。また、研究代表者は、その移設の計画から遂行、新たな遺伝子組換え実験実施場所や動物実験室の申請手続きなどを含む事務処理等全てを企画・総括し教室員を束ねて実務も行っていたため、その関連業務の多忙が半年ほど続いた。さらに、移設による実験機器の故障や配電不足等もあり速やかな実験再開が困難であった。これらのことから研究遂行が遅延し、マイクロアレイなど高額の解析費用の支出が遅れ次年度使用額が生じた。 今後は、現在、網羅的遺伝子発現解析及びWT・KOマウス骨の組織形態学的解析を受託中であり、それらの費用とその後の解析(これらの解析から、WT、KO間で発現量に差のある遺伝子を絞り込み、分子メカニズムの解析に進む)にかかる試薬・物品費及び成果発表、論文投稿に使用する予定である。
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