2018 Fiscal Year Research-status Report
味蕾細胞分化メカニズムの解明:Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型の枠を越えて味覚機能を制御する転写因子
Project/Area Number |
17K11647
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三浦 裕仁 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80353936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 江梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (20791700)
原田 秀逸 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60128452)
大木 誠 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60596104)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 味覚 / 味蕾 |
Outline of Annual Research Achievements |
味蕾は、甘味/うま味/苦味/酸味/塩味(5基本味)の味受容細胞を含む数10~100個の細胞が集まった味覚受容器である。味蕾細胞は上皮幹細胞から生み出され、平均すると10~14日という短い寿命で次々と置き換わっている(味蕾細胞のターンオーバー)。健康な状態では、味蕾細胞の新生・分化と細胞死がバランスよく進行し、味蕾に含まれる細胞の数と性質はほぼ一定で、正常な味覚機能が保たれる。味蕾のターンオーバーの異常は味覚障害を引き起こすため、その分子機構の解明は味覚障害の予防法や治療法の開発にたいへん重要である。しかし、その詳細は大部分不明のままである。私達は、これまでに味蕾が形成される最も初期の段階(胎生期の味蕾原基)から、成体の味蕾に至るまで、ほぼ全ての味蕾細胞に発現し続ける転写因子(遺伝子発現の調節因子)を明らかにした。本研究では、この転写因子の遺伝子ノックアウトマウスの解析を進めて、味蕾が小さくなっていることを明らかにした。本年度は、発生過程の解析を進めて、味蕾原基の形成には異常は認められず、味蕾細胞のターンオーバーの変化によって味蕾の形態変化が生じていることを明らかにした。また、味覚行動解析によって、苦味に対する忌避に加えて、塩味に対する忌避性の感受性が大きく低下していることを明らかにした。甘味、酸味に対する感受性の低下も確認した。また、舌先端、舌基部、軟口蓋の3つの部位の味蕾について比較解析を進めて、軟口蓋の味蕾に最も大きな変化が生じていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスの味蕾の変化は、味蕾原基形成過程ではなく、味蕾細胞ターンオーバーの変化によって生じていることを明らかにした。また、個体レベルでの基本味に対する感受性の変化の詳細が明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックアウトマウスの味蕾で、I 型細胞への影響、また、未分化細胞の増加や減少、細胞死の状態の解析を進める。また、塩味の嗜好性に関して、神経応答解析で嗜好性と忌避性のシグナルの比較解析を進める。
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Causes of Carryover |
動物関係経費と組織解析用経費を別予算で賄うことができたので、次年度使用額が生じた。 次年度は、当初から予定している経費に加えて、分子生物学的解析、組織解析に必要な経費を拡充して、さらに味蕾の詳細な解析を行う予定である。
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