2018 Fiscal Year Research-status Report
生体イメージングと網羅的遺伝子解析による唾液腺の代償性肥大機序と分子基盤の解明
Project/Area Number |
17K11651
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (00305913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 貴雄 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (20326549)
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唾液分泌 / 分泌機能亢進 / 細胞内Ca2+応答 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、片側障害によって起こる反対側の分泌機能亢進を誘導する生体内シグナルや分子を解析し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。初年度は肥大腺が誘導された唾液腺の腺房細胞で、受容体刺激に対するCa2+応答の感受性が亢進していることを明らかにした。さらに片側障害に誘導された機能亢進腺で発現量が変化する遺伝子を同定した。本年度は機能亢進腺で変化する遺伝子のさらなる検索を行い、さらに変化した遺伝子をマーカーとして機能亢進を起こすシグナル解析を行った。また遺伝子変化のパターンから、片側結紮後の時間を7、21日後に加え3日後の実験を行い、腺重量、細胞形態および遺伝子発現量変化を解析した。 1)片側顎下腺導管結紮による反対側顎下腺の重量、細胞形態変化:3、7、21日の反対側顎下腺は、対象群と比べ約9~15%の重量増加が認められた。しかし、機能亢進腺における唾液腺細胞(腺房および導管)の細胞数や細胞の大きさに大きな差は認められなかった。 2)機能亢進腺の遺伝子発現量変化:網羅的解析によって変化が認められた57種類の遺伝子のうち、12種類のリアルタイムPCR法により定量的に解析した。現在までに、3日後で2つ、7日後で4つ、21日後で3つ、合計で6種類の有意に発現量が変化する遺伝子を同定した。現在、これらの遺伝子と顎下腺肥大および機能亢進の誘導との関係を解析中である。またこれらの遺伝子をマーカーとして、7日後の機能亢進誘導における遺伝子発現における副交感神経遮断薬の影響を調べた。その結果、対照群と比べ機能亢進腺で有意に発現が低下する遺伝子を見出した(研究協力者:Azmeree Jahan、蓑輪映里佳、郷賢治、石田成美)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肥大誘導された顎下腺の唾液分泌とCa2+応答の同時解析により、腺房細胞の機能亢進が起こっていることを見出した。また遺伝子発現の網羅的解析により57個の候補遺伝子を同定し、その発現量を定量的に解析した。これまでは7日、21日後のみであったが、これらの遺伝子発現のパターンからより早い段階から遺伝子変化が起こっている可能性を考え、結紮初期(3日後)での検討を行った。同定した遺伝子の発現は初期(3日)、中期(7日)、長期(21日)と異なる変化を示し、これらの遺伝子変化は機能亢進腺の誘導に関わるマ-カー遺伝子であると考える。遺伝子変化に関して、新たなタイムポイントを考慮に入れたため、当初予定した誘導シグナル解析にやや遅れが生じた。現在、変化した遺伝子を機能亢進の誘導マーカー遺伝子としてシグナル解析を進めており、副交感神経遮断薬による特定の遺伝子が有意に抑制されることを見出した。さらに薬理学的手法を用いてシグナル解析を推し進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究で、機能亢進誘導のマーカーとなり得る6つの遺伝子の同定し、唾液腺肥大や機能亢進誘導に対する作用を調べてきた。その結果、片側結紮障害によるシグナルは、導管細胞の減少と腺房細胞の増加を引き起こしている可能性が示唆された。加えて、これらのマーカー遺伝子をもとに機能亢進を誘導するシグナルや分子を検索している。現在までに、候補遺伝子57個を網羅的解析で同定され、そのうち12個の解析が終了した。残りの候補遺伝子でも定量解析を行い新たなマーカー遺伝子を検索する。 また、機能亢進、腺肥大に関する組織学的な検討により増殖因子の発現や筋上皮細胞の分布などの解析を行い、これらの誘導機構に対する影響について検討する。 最終的な目標は、マーカー遺伝子発現量の解析により、肥大誘導を起こすシグナルと分子候補を同定することである。得られたシグナル分子の候補を活性化する様々な薬物による薬理学的なアプローチや、その分子の強制発現や遺伝子のノックダウンを遺伝子発現ベクターやsiRNAといった分子生物学的手法を用いて、腺肥大や機能亢進を誘導するかどうかを解析する。生きた動物の唾液分泌機能解析には唾液分泌とCa2+応答の同時測定システムにより検討する。 またAQP5低発現ラットを用いた、AQP5をマーカーとしたスクリーニングについても検討を試みる。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 当初予定していたAQP5低発現ラットを用いた実験が十分に進展しなかった。そのためタンパク質発現量解析に関わる電気泳動や抗体等の購入しなかったため、その予算の使用額が減少した。 一方、野生型のラットを用いた実験は順調に進み、実験のタイムポイントとして結紮初期(3日後)が増えたことにより、実験動物やリアルタイムPCR試薬の購入したことで概ね予定通りの予算の使用となった。 (使用計画) 最終年度では、マーカー遺伝子のさらなる検索と、このマーカー遺伝子の発現量解析による機能亢進誘導シグナルを明らかにすることを目的に実験を行う。遺伝子発現ベクターやsiRNAを作成予定で、分子生物学的実験のための試薬、器具、および実験動物を購入予定である。また2~3回の学会(国内学会および国際学会)での発表を予定しており、研究費はこれらの学会の参加費や旅費としても使用する。
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