2017 Fiscal Year Research-status Report
高頻度発火型GABAニューロンを中継する梨状-島皮質間の新規性局所神経回路の同定
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17K11653
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 清文 日本大学, 歯学部, 助教 (30609764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
藤田 智史 日本大学, 歯学部, 准教授 (00386096)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 島皮質 / 嗅覚 / 痛覚 / 外側嗅索 |
Outline of Annual Research Achievements |
「匂い刺激によって痛みが和らぐ」という、全く新しい大脳皮質嗅覚野-無顆粒島皮質の神経回路を同定し,急性疼痛に加え,慢性疼痛や癌性疼痛に対して革新的な治療法の基盤を確立することを本研究の目標とした。 従来の刺激電極による電気刺激は,電極周辺部に位置するニューロンの動員に加え,視床などの他の神経核・領域から投射する線維の動員が予想されるため,記録ニューロンから得られる応答が皮質からの応答であるか,視床からの応答であるかを判別できない。近年,光遺伝学的手法の適用により,チャネルロドプシン2(Ch2R)を発現させることでLOTだけを光で刺激し,興奮させることが可能になった。島皮質に微量注入されたGABA受容体亢進薬が無痛や知覚過敏といった痛みを感じにくくさせる効果を示すことが報告されるが,FSN集団の動員でも同じ効果が生じるか不明である。これらFSN集団の軸索は無顆粒皮質第5層深層-第6層に終止することから,これら集団は,深層に局在する興奮性の出力ニューロンに抑制をかけ,島皮質からの出力を減弱する能力を有し,疼痛閾値の上昇に寄与すると考えられる。本研究では,これらの島皮質出力ニューロンに抑制をかけるFSN集団と嗅覚情報の中継核である嗅球ならびにLOTに焦点をあてた。これらFSN集団の動員を誘発させると予想される嗅球からの匂い情報の入力が,種々の痛みを感じにくくさせ,除痛効果をもたらす可能性を検証する。 初年度,申請者は光遺伝学的手法を用いて,嗅球から梨状皮質ならびに島皮質に投射する線維束に ChR2を発現させ,その線維を光にて刺激した。ベクターウイルスによる遺伝子導入が成功しているスライス標本にてChR2の発現に最適な条件を設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した研究・実験内容にしたがって,(1)嗅球へのウイルス微量注入条件ならびに動物に対する処置の最適化,(2)発現したChR2および蛍光タンパクであるmCherryの評価方法,(3)光照射条件の最適化,(4)光刺激にて誘発したシナプス応答の評価方法の最適化の確立を初年度の目標とした。 (1)および(2)の項目において,嗅球に微量注入したウイルスの条件設定のために,順行性色素のfast-blueを嗅球に注入し,嗅球注入に必要な頭蓋骨の窓の大きさや,最適な深さ,量を詳細に検討した。また,その動物の嗅球スライスを作製し,嗅球内で広がる色素液の分布に基づき注入量を決定した。アデノ随伴ウイルス注入の数週間後に島皮質を含む急性脳スライス標本を作製し,mCherryで蛍光ラベルされた嗅球由来の投射線維の分布および蛍光強度の強弱の度合いにて,注入量を再調整した。 (3) 落射式LED光刺激装置やグラスファイバー式光刺激装置といった様々な刺激・照射条件を準備し,最適な刺激条件を検討した。島皮質内の記録ニューロン近傍に光を照射すると興奮性シナプス応答が誘発され,一方でニューロンから遠位の外側嗅索に照射したところ抑制性シナプス応答が誘発された。このことから,本実験では,落射式ならびにファイバー式の光刺激のいずれも,外側嗅索上が適していると推察されるに至った。 (4) 扁桃体に逆行性蛍光色素を微量注入し,扁桃体に投射する島皮質の出力ニューロンを同定し,光刺激を行ったところ,これまで観察された同様の応答を観察した。また,双極性刺激電極を島皮質に設置し,光刺激用ファイバーを外側嗅索上に設置した。光刺激誘発性シナプス応答は,電気刺激にて誘発させた局所性シナプス応答を強力に抑制することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で提示したスライスを用いた in vitroにおける実験は,予定通りに進行し,申請者が予想した結果が得られていいる。したがって,次年度では,(1)疼痛モデルにおいて認められる,島皮質のシナプス伝達亢進モデルから得られたスライス標本をもちい,本回路の動員がシナプス伝達の亢進に与える影響を詳細に検討する予定である。 また,実際に動物に光ファイバーを植立し,神経因性疼痛モデル形成過程において,本回路が与える影響を精査する予定である。
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Causes of Carryover |
ベクターウイルスは海外ラボから購入するため,為替変動の影響をうける。その動向に注視したが,購入時期のタイミングで価格変動が生じ,予定価格よりも安価にて購入することができた。 次年度使用額および30年度助成金と合わせて,次年度のウイルス購入費やガラス器具,交換用灌流チューブに使用する予定である。
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Research Products
(2 results)