2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K11654
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 博 安田女子大学, 薬学部, 教授 (20155774)
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔乾燥 / p38マップキナーゼ / トリップチャネルV4 / 舌機械痛覚過敏 / 三叉神経節細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は口腔乾燥によって舌に発症する機械痛覚過敏の神経機構に関する研究を進め、舌乾燥によって三叉神経脊髄路核尾側亜核および上部頸髄に存在する侵害受容ニューロン活動が著しく亢進し、これが原因で舌に機械痛覚過敏が発症することを報告してきた。この結果は口腔乾燥によって、一次ニューロンの興奮性増加、さらにこの興奮が長期間持続することによって末梢神経系の感作が誘導され、一次ニューロンいおいては様々な物質の合成が亢進することを示唆している。特に、舌乾燥モデルにおいて観察される痛覚過敏は舌の機械刺激に対して、顕著であることから、舌を乾燥することによって三叉神経節細胞では機械刺激に感受性を示す受容体の合成が亢進すると考えられる。そこで、本プロジェクトでは舌乾燥モデルラットを作製し、三叉神経節細胞に発現する様々な分子の動態について、免疫組織学的手法および生化学的手法を用いて解析を行った。その結果、舌乾燥モデルラットの三叉神経節細胞においてはMAPキナーゼの一つとして知られているp38のリン酸化が有意に亢進することを突き止めた。また、機械刺激に対する受容体として知られているTRPV4の合成も亢進することも明らかにした。さらに、TRPV4の合成を阻害することにより、舌の機械痛覚過敏が抑制されることを報告した。また、TRPV4の発現増加はp38のリン酸化を阻害することによって抑えられることが明かになった。以上の結果から、舌乾燥による舌機械痛覚過敏にはMAPキナーゼの一つであるp38のリン酸化、さらにこれによるTRPV4の発現増加が重要な働きを有する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、本年度もこれまでと同様の方法で作製した舌乾燥モデルラットを用いて、舌の機械痛覚過敏の末梢神経機構に関する研究を行い、MAPキナーゼの一つであるp38のリン酸化がTRPV4の発現調節に対し重要な働きを有することを突き止めた。また、この細胞内シグナル伝達が、乾燥舌の機械痛覚過敏を引き起こす可能性があることが判明した。このようなメカニズムが明らかになったことは、本研究がおおむね当初の計画通りに進んだことを意味する。一方で、当初の研究研究計画では、TRPV4以外のチャネルに関しても検索することを計画していたが、昨年度はTRPV4およびTRPV1のみのデータしか得られていない。次年度はさらに、TRPA1やピエゾチャネルを含む他のチャネルに関しても検索を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度までと同様のモデルラットを作製し、三叉神経節細胞におけるTRPA1およびピエゾチャネルの発現動態について解析を進める。同時に、最近の我々の研究で三叉神経節細胞活動の変調に対して、神経節細胞周囲に多数存在する衛星細胞が重要な働きを有することが明らかになってきたので、次年度は、三叉神経節細胞活動だけでなく、衛星細胞と三叉神経節細胞との機能連関についても研究領域を広げ解析を進める予定である。特に三叉神経節細胞と衛星細胞との機能連関に対して重要な働きを有すると考えられる一酸化窒素の役割についても明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画どおり経費を使用したところ、予想していたより少ない経費で結果を出すことができたため、繰越金が生じた。次年度への繰越金は、平成31年度の助成金と合わせて物品費に使用する。特に本研究は臨床の現場で実際に口腔乾燥症による舌痛で苦しんでいる患者が多数存在することから、より適切で効率的な治療の開発が急がれる。そのため、本プロジェクトは次年度で終了することなく、将来的にもさらにメカニズムの解明および新たな治療法能の開発に向けた基礎研究を継続する必要がある。そのため、繰越金と次年度研究費を合わせて、将来のプロジェクトにつなげるために、より効率的に研究を進めていく予定である。
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