2017 Fiscal Year Research-status Report
歯周病病態形成における新規抑制性共刺激分子VISTA関与の解明
Project/Area Number |
17K11663
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大野 建州 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80435635)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | VISTA / 共刺激分子 / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞に発現している多様な共刺激分子はT細胞抗原受容体を介したシグナルを正または負に修飾し、T細胞依存的な免疫応答を調整している。新規の抑制性共刺激分子であるVISTAが抗腫瘍免疫応答や自己免疫応答などのT細胞依存的な免疫応答を抑制的に制御していることが報告されている。一方、VISTAに結合する分子がいまだ不明である等、VISTAの詳細な作用機序は不明な点が多い。本研究では、T細胞依存的ならびにT細胞非依存的な免疫応答が共に深く関与する歯周病病態誘導におけるVISTAの関与を歯周病モデルを用いて明らかにすることを目的とした。VISTAはT細胞の他、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞にも発現しており、T細胞依存的な免疫応答を抑制的に制御している。代表的な抑制性共刺激分子であるPD-1やCTLA-4と大きく異なるVISTAの特徴として、抗原提示細胞上に抑制性の共刺激分子リガンドとして発現し、T細胞応答を抑制的に制御する機能とT細胞上に発現する抑制性の共刺激分子受容体として発現し、T細胞応答を抑制的に制御する2つの機能を持つことがあげられる。しかしながらVISTAのT細胞非依存的な免疫応答に関しては明らかになっていない。歯周病がT細胞依存的ならびに非依存的な免疫応答が共に深く関与していることをふまえ、平成29年度はT細胞非依存的な免疫応答に特化してVISTAの機能解析を行った。T細胞非依存的な疾患モデルであるLPS誘導性ショックマウスモデルでは、申請者が作製した抗VISTA阻害抗体(MIH63)の投与によってマクロファージからのTNFa産生が増強されるとともに、致死率が増加することを見出し、VISTAがT細胞依存的な免疫応答だけでなくT細胞非依存的な免疫応答も制御していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周組織における免疫システムは、口腔常在菌を含む病原性微生物や有害外来物質を含む様々な外来抗原の曝露から組織を護り、それらはT細胞依存的な獲得免疫システムとマクロファージや樹状細胞などによって惹起されるT細胞非依存的な自然免疫システムの両方によって担われている。このような複雑な免疫応答が病態誘導に深く関わると考えられる歯周病におけるVISTAの関与を明らかにするために、平成29年度はまずT細胞非依存的な自然免疫応答が直接的に病態誘導するとされる、LPS誘導性ショックマウスモデルを用いてT細胞非依存的な免疫応答におけるVISTAの関与の解析を行った。マウスへLPSを腹腔内投与する際に、申請者が作製した抗VISTA阻害抗体(MIH63)の投与を行うと、マクロファージからのTNFa産生が増強されるとともに、血清中のTNFaやAST、ALTなどの肝逸脱酵素濃度が増加し、致死率が増加した。さらにマクロファージを除去したマウスでは抗VISTA阻害抗体の投与によるこのような影響は見られなかた。これらからVISTAがT細胞依存的な免疫応答だけでなくT細胞非依存的な免疫応答も制御していることが明らかにとなった。これらの結果は歯周病病態誘導におけるVISTAの関与を明らかにするという本研究の最終的な目標を達成する上で、特に歯周病病態誘導の重要な要素の1つである自然免疫応答のVISTAの関与を解析するにあたり、大きな足掛かりとなると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周組織免疫スステムにおけるVISTAの関与を明らかにするにあたり、歯周組織におけるVISTA発現解析は必須である。現時点で、マウス歯周関連組織において所属リンパ節中のT細胞および樹状細胞が恒常的にVISTAを発現していることを確認しているが、組織細胞、免疫細胞を含めた歯周組織局所における発現細胞に関しては不明である。マウス歯肉へのLPS投与または歯周病原菌P.gingivalis (P.g)菌感染の後、組織中のVISTA発現細胞の解析を行い、VISTAシグナルに関与しうる細胞を同定していく。また、VISTAによる歯周病病態制御機能を明らかにするにあたり、LPS誘導性歯周炎マウスモデルがT細胞非依存的な免疫応答に特化した解析に有利であるのに対し、P.g菌感染歯周炎モデルではLPSを含めた細菌由来病原体関連分子パターン認識によるT細胞非依存的な免疫応答だけでなくP. g菌由来抗原特異的であるT細胞依存的な免疫応答も含めた解析が可能となる。この2つの歯周炎モデルへの抗VISTA阻害抗体投与の影響を評価することによって歯周炎病態誘導におけるVISTAのより詳細な機能解析を行っていく。特に、歯肉炎症局所における炎症性サイトカイン発現量や顎骨の吸収量だけでなく、歯肉組織および所属リンパ節における免疫細胞サブセット、抗炎症性サイトカイン発現の解析を行い、VISTAによる病態抑制機能を明らかにする方針である。
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