2017 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌とグリコサミノグリカンの相互作用が炎症応答と感染成立に果たす役割の解析
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17K11666
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
広瀬 雄二郎 大阪大学, 歯学研究科, 特任助教 (90788407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 雅也 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00714536)
川端 重忠 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50273694)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 髄膜炎 / 糖鎖 / Ccs4 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌は髄膜炎や敗血症などの致死性が高い疾患を引き起こす。真核細胞表面の大半のタンパク質は、短い糖鎖が結合した糖タンパク質の形で存在し、細胞の最表層は糖衣で覆われている。しかし、糖鎖と肺炎球菌の相互作用には不明な部分が多い。グリコサミノグリカン (GAG) は細胞外マトリックスの主要な構成成分で、コアタンパク質に結合し細胞表層に局在している。そこで、申請者らは「肺炎球菌GAG結合タンパク質は肺炎球菌性髄膜炎の発症過程において、脳血管内皮細胞のバリア通過に関与する」という作業仮説を立て検討を行なった。 ヒト脳微小血管内皮細胞表面の糖鎖を分解酵素 (heparinase) で処理すると、肺炎球菌の野生株において、細胞への侵入率が低下することを見出した。次に、肺炎球菌 TIGR4株の全アミノ酸配列と髄膜炎菌のNeisserial Heparin Binding Antigen (NHBA) の相同性検索から、TIGR4株の形質転換誘導性タンパクCcs4がヘパリン結合性に重要であるアミノ酸配列を持つことが示された。そこで、ヒト脳微小血管内皮細胞へ野生株とccs4遺伝子欠失株を感染させたところ、野生株と比較してccs4遺伝子欠失株で付着率・侵入率が低下した。しかし、野生株における細胞への付着率・侵入率は、細胞のheparinase処理または肺炎球菌のheparin処理を行っても、ccs4遺伝子欠失株の付着率・侵入率より有意に高かった。また、マウス髄膜炎モデルにおいて、血中での野生株とccs4欠失変異株の生存菌数に差は認められなかったが、脳内の菌数はccs4の欠失により有意に減少することが示された。以上の結果から、Ccs4は糖鎖へ結合する以外の方法で肺炎球菌の脳微小血管内皮細胞への付着および侵入を促進することにより、髄膜炎発症に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺炎球菌性髄膜炎の発症に寄与する分子としてcompetence induced protein Ccs4を同定しできたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
in silico 解析、ならびにヘパリンカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにて、肺炎球菌グリコサミノグリカン (GAG) 結合タンパク質の選出を進める。同定した候補分子組換え体を作製し、ヘパラン硫酸への結合能力を確認する。その後、同定した肺炎球菌GAG結合タンパク質の遺伝子欠失株、組換え体を作製し、ヒト脳血管内皮細胞を使用した付着・侵入・トランスロケーション試験、マウス髄膜炎モデルに供試することで、多角的に検討する。さらに、肺炎球菌感染時に脳血管内皮細胞自身から分泌されるケモカインを測定する。GAG結合性が報告されているケモカインについて、それらの組換え体を作製する。GAGとケモカイン組換え体の結合を、肺炎球菌GAG結合タンパク質が阻害するかを確認する。マウス髄膜炎モデルでの組織像と免疫蛍光染色から、肺炎球菌GAG結合タンパク質の炎症拡大への関与を検討する。また、病原性に関与している肺炎球菌GAG結合タンパク質について、組換え体をワクチン候補としてマウスに免疫し、そのマウスにおいて髄膜炎モデルでの致死率・組織像の変化を観察する。
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Research Products
(12 results)