2017 Fiscal Year Research-status Report
エクソソームは歯周病における歯槽骨破壊の新しい細胞間情報伝達物質となるか?
Project/Area Number |
17K11682
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
鍵谷 忠慶 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (30405774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム / microRNA / 細胞外小胞 / 破骨細胞 / 歯周病 / 骨吸収 / 炎症 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームは細胞が分泌するナノ粒子で、その中にはmRNAやmicroRNAが存在する。本研究は、このエクソソームに注目し、これまで炎症性サイトカインやLPSを中心に議論されてきた歯周病の病態を、全く新しい視点から解明することを目的とする。平成29年度は歯周組織を構成する細胞が、歯周病に罹患すると、細胞の内外でどのようなmicroRNAの発現変化が起こるかを調べるため、培養細胞で実験した。初代ヒト口腔上皮細胞をTNF-α存在下、または P. gingivalis由来のLPS存在下で72時間培養し、細胞内のTotal RNA を回収して、マイクロアレイ解析を行った。解析した2,588種類のmicroRNAのうち、TNF-αによって2倍以上発現が上昇したのは15種類、0.5倍以下に発現が減少したのは40種類であった。なかでも、miR-4730, miR-6716-3p, miR-451bは30倍以上発現が上昇し、miR-6819-5p, miR-6760-3p, miR-4252は0.05倍以下に発現が減少した。一方、LPSによって2倍以上発現が上昇したのは36種類、0.5倍以下に発現が減少したのは16種類であった。なかでも、miR-146a-5p, miR-8060, miR-582-5pは18倍以上発現が上昇し、miR-1238-5p, miR-335-3p, miR-3149は0.1倍以下に発現が減少した。 また、歯周組織を構成するいくつかの細胞からエクソソームを回収して、RNAを抽出後に、次世代シーケンサーにてsmall RNA-seq解析を行った。エクソソーム内には予想よりもはるかに多くのmRNA分解産物と考えられるRNAが多かった事で、解析に時間を要している。今後は、本解析を終了させて、歯槽骨吸収を促進するエクソソームについて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の研究は、以下の2つの実験系に大別できる。 1. 歯周組織を構成する細胞として初代ヒト口腔上皮細胞を使い、細胞内でのmicroRNAの発現変化を調べる実験系。本実験系は計画通りに行うことが出来た。 2. 歯周組織を構成するいくつかの細胞からエクソソームを回収して、その内容物を次世代シーケンサーにてsmall RNA-seq解析する実験系。本実験系では解析を進めると、エクソソーム内に見かけ上small RNA サイズのmRNA分解産物と考えられるRNAが、予想よりもはるかに多く存在していた。これが原因で、解析に時間を要している。 以上、small RNA-seq解析に時間を要した事により、研究計画全体にやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
難航しているsmall RNA-seq解析については、ライブラリー調製方法等を工夫して、問題解決に近づいている。平成30年度は本解析を終了させて、歯周組織に由来するエクソソームの中味を明らかにする。つづいて、ヒトCD14陽性細胞からM-CSF/RANKLを使って、破骨細胞を誘導する培養系へ歯周組織を構成する細胞から得られた炎症状態のエクソソームを添加して、TRAP染色により形成される破骨細胞数、Pit formation assayにより骨吸収力を評価する。破骨細胞形成を促進したり、骨吸収を促進するエクソソームを歯周病における歯槽骨吸収を促進するエクソソームの候補として解析を進める。そして、歯槽骨吸収を促進すると考えられるエクソソーム内のmicroRNAを絞り込み、バイオイメージング等でそのエクソソームが破骨細胞内へ取り込まれることを示したい。
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Causes of Carryover |
平成29年度にsmall RNA-seq解析費用として60万円程度の使用を予定していた。しかし、解析が難航して時間を要したため、この費用を次年度へ繰り越す事にした。 前述のように、問題は解決しつつあるので、繰り越した予算をsmall RNA-seq解析に充て、平成30年度予算は、当初の計画通り使用する予定である。
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