2018 Fiscal Year Research-status Report
エクソソームは歯周病における歯槽骨破壊の新しい細胞間情報伝達物質となるか?
Project/Area Number |
17K11682
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
鍵谷 忠慶 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (30405774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム / microRNA / 細胞外小胞 / 破骨細胞 / 歯周病 / ナノ粒子 / バイオマーカー / リキッドバイオプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(平成29年度)の研究は、歯周組織の細胞からエクソソームを回収して、その内容物を次世代シーケンサーにてsmall RNA-seq解析する実験系を大きな柱の一つにしていた。しかし、解析を進めると、様々な困難に直面して時間を要してしまい、当初の計画通りには進まなかった。そこで、平成30年度は、まず、この難航しているsmall RNA-seq解析に取り組んだ。ライブラリー調製方法等を再検討することで、時間を要したものの、この課題を解決することが出来た。この成功によって、研究が大きく進展した。また、エクソソームは細胞外小胞の一種であり、ヘテロな小胞の集団である。そのため回収方法によって、その性質が異なる場合がある。そこで、本実験系で使用したエクソソームの表面抗原を抗体アレイで網羅的に解析した。試薬メーカーのプロトコール通りに実験してもデータが得られず、時間を要したものの、プロトコールを工夫することによって、年度内にデータを得ることが出来た。生理的状態のTHP-1 細胞由来マクロファージ様細胞から得られたエクソソームでは、解析した CD63, CD81, FLOT1, ICAM, ALIX, EpCAM, ANXA5, TSG101のうち、CD81とEpCAMが強く発現していた。CD63は、テトラスパニンのひとつで、エクソソームのマーカーとしてよく知られるが、生理的状態のマクロファージ様細胞のエクソソームでは、それほど強く発現していなかった。しかし、TNF-α刺激によってCD63陽性のエクソソームが増える傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、前年度(平成29年度)の研究は、歯周組織の細胞からエクソソームを回収して、その内容物を次世代シーケンサーにてsmall RNA-seq解析する実験系を大きな柱の一つにしていたが、様々な困難に直面して時間を要してしまい、当初の計画通りには進まなかったために、研究計画全体が遅れていた。しかし、平成30年度は、ライブラリー調製方法等を再検討することで、この課題を解決することが出来た。この成功によって、研究が大きく進展した。また、予備的実験段階ではあるが、ヒトCD14陽性細胞からM-CSF/RANKLを使って、破骨細胞を誘導する培養系へ歯周組織を構成する細胞から得られた炎症状態のエクソソームを添加して、骨吸収力を評価する実験にも着手することが出来た。このように、これまでの遅れを取り戻して、概ね計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度で予備的実験として行った実験を更に詳細に検討して、データを得たい。つまり、ヒトCD14陽性細胞からM-CSF/RANKLを使って、破骨細胞を誘導する培養系へ歯周組織を構成する細胞から得られた炎症状態のエクソソームを添加して、TRAP染色により形成される破骨細胞数、Pit formation assayにより骨吸収力を評価する。破骨細胞形成を促進したり、骨吸収を促進するエクソソームを歯周病における歯槽骨吸収を促進するエクソソームの候補として解析を進める。そして、歯槽骨吸収を促進すると考えられるエクソソーム内のmicroRNAを絞り込み、バイオイメージング等によって、そのエクソソームが破骨細胞内へ取り込まれることを示したい。また、生理的状態と炎症状態では、歯周組織の細胞から分泌されるエクソソームは異なるのか、異なるのならば、どのような点が異なるのかを検討して、論文としてまとめたい。
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Causes of Carryover |
難航していたエクソソームのsmall RNA-seq解析が成功して、研究が大きく進展し、実験に供するサンプル数を増加させた。これにより、平成30年度は、計画よりも多くの予算が必要となったため、次年度(令和元年度)分の予算を前倒しで使用した。従って、平成30年度予算に残額が生じたのではなくて、研究の進展により、計画よりも多くの予算が必要となり、次年度(令和元年度)分の予算を前倒しで使用した結果、見かけ上、次年度使用額が生じたようになっている。この前倒し使用の結果、令和元年度分の予算は減額になるが、研究の大きな進展によって、実験も前倒しになる傾向があるため、研究期間終了時点では、当初の研究目的以上の成果を達成できると期待される。
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