2018 Fiscal Year Research-status Report
悪性腫瘍における唾液ヒスタチンの抗腫瘍作用と特異的な遺伝子発現制御機構の解明
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17K11690
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 宏 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (30312094)
雪田 聡 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80401214)
十川 紀夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (30236153)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 唾液蛋白質 / ヒスタチン |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液は1日に約1.5リットル分泌され、口腔内浄化や嚥下等に影響を与えている。また、唾液成分は歯周病、う蝕、カンジタ症、がん等の発症・進行と密接に関係する。唾液蛋白質ヒスタチンには、歯周病原菌、う蝕原因菌、カンジダ菌に対する抗菌作用がある。我々が示したヒスタチンの新規機能には、ヒト歯肉繊維芽細胞の増殖・生存促進効果、熱ショック蛋白質によるToll様受容体を介した炎症性サイトカイン産生の抑制効果がある。この様に、ヒスタチンは生体に及ぼす様々な生理機能を持ち、がんに対しても生理作用を示すことが考えられる。 ヒスタチンの発現は唾液腺特異的であるが、唾液腺以外の悪性黒色腫細胞(G-361)でも認められる。そこで、ヒスタチンプロモーター(転写開始部位から上流-2254領域)の転写活性をG-361で解析したところ、極めて高いことが判明した。このプロモーターの上流から欠失させた様々な変異体の転写活性解析から、最終的に正に転写制御する-1232~-1192領域を見出した。また、この領域に結合する核内蛋白質の存在が確認された。これらは、がん細胞でのヒスタチンの発現制御とその意義の解明に繋がる重要な結果である。 G-361はオートクライン的にヒスタチンの生理作用を受けている可能性が高い。そこで、G-361をヒスタチンで刺激後、発現変動する遺伝子をDNAマイクロアレイで解析した。その結果、発現抑制される遺伝子群として細胞間情報伝達系や情報/受容体系等があった。これは、がん細胞に与えるヒスタチンの生理作用の一端を明らかにした内容である。 ヒスタチンファミリーメンバーであるヒスタチン3は子宮頸癌細胞HeLaの生存率を低下させるが、同じメンバーのヒスタチン1も同様であった。しかし、その効率はヒスタチン3よりも低かった。以上は、ヒスタチンが抗腫瘍作用を有する生理活性物質であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、悪性黒色腫細胞におけるヒスタチン遺伝子の発現をmRNAレベルで解析し、また、ヒスタチン遺伝子プロモーターを用いた解析により、その転写制御を明らかにしてきた。今回は、このプロモーターの様々な欠失変異体を作製し、これらの転写制御を解析することにより、悪性黒色腫細胞で正に強く働く転写制御領域を見出せた。また、この領域に結合する核内蛋白質の存在性を示唆した。更なる解析により、この領域中のコアとなる配列を決定することで、ここに結合する核内蛋白質の特性が明らかにされるものと考えている。 ヒスタチンにより発現変動する悪性黒色腫由来の細胞内因子を見出し、また、ヒスタチンファミリーメンバーでの抗腫瘍作用を示唆していることから、今後の更なる解析による進展が期待できる。 以上から、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、悪性黒色腫細胞で発現するヒスタチン遺伝子の転写制御機構を解明することで、唾液腺由来細胞でのヒスタチンの組織・細胞特異的発現制御とは異なったメカニズムの解明を目指していく。今後、悪性黒色腫細胞で働くヒスタチン遺伝子のコアとなる転写活性化領域(配列)について、その特性(結合蛋白質の特性など)を詳細に解明することにより、上記目的を達成する様、研究を遂行していく。 ヒスタチンによる悪性黒色腫細胞での発現変動遺伝子をDNAマイクロアレイで解析し、細胞間情報伝達系や情報/受容体系等の遺伝子群を見出したため、これらの特性をより詳細に解析し、ヒスタチンのがんに対する生理的意義を解明する。また、DNAマイクロアレイ解析の結果を参考にし、ヒスタチンの抗腫瘍作用に関与する可能性がある遺伝子群を推測し、注目することも視野に入れ、抗腫瘍作用の機序を更に詳細に解明していく。
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Causes of Carryover |
「理由」 おおむね計画通りに研究費を使用した状況となっている。次年度使用予定の助成金を生ずる結果となったが、これは試薬などの購入にあたり、キャンペーン割引価格の場合があったためである。また、総じて研究費使用にあたって節約に努めたためである。 「使用計画」 生じた次年度使用額は、試薬などの購入に使用し、また、解析費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)